最新記事

医療

パンデミック拡がるアフリカ、オンライン診療急拡大 欧米企業も大型投資

2020年9月14日(月)11時09分

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が続く中、世界中で医療のあり方に大きな変化が生じており、アフリカでも医者の診察は対面ではなくオンラインによる遠隔の問診で行われるケースが増えている。写真は、ナイジェリアの首都アブジャで医者とビデオチャットをする、慈善団体調査員のロベス・メティボバさん。8月31日撮影(2020年 ロイター/Afolabi Sotunde)

ナイジェリアの首都アブジャで慈善団体の調査員として働くロベス・メティボバさんは赤ちゃんが下痢を起こした時に、自宅近くの診療所に行くと2人とも新型コロナウイルスに感染するのではないかと不安になった。「診療所に行くことを考えると、とても怖かった」という。

この診療所はナイジェリアの医療ハイテク会社イーヘルス・アフリカが運営しており、来所しなくても済むようにメティボバさんに医者とのビデオチャット用のリンクを送った。

新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)が続く中、世界中で医療のあり方に大きな変化が生じており、医者の診察は対面ではなくオンラインによる遠隔の問診で行われるケースが増えている。

とりわけ、医療へのアクセスが難しい場合が多々あるアフリカはこうした変化が劇的で、オンラインによる診療や医薬品販売を手掛ける企業の成長が期待できる。診療所はビデオチャットによる診察で赤ちゃんの症状は軽いと診断し、脱水症状を防ぐ薬を処方した。

メティボバさんが利用したオンライン診療システムを開発したキュアコンパニオン(米テキサス州)のムクル・マジムダル最高経営責任者(CEO)によると、今年のアフリカでの事業は昨年の12倍に拡大。アルメニア、ホンジュラス、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、米国、ナイジェリアの7カ国のオンライン診療は10倍に増えた。

診療記録のデジタル化を専門に手掛けるナイジェリア企業のヘリウム・ヘルスは事業を拡大し、2月にオンライン診療システムを立ち上げた。当初は今年もっと遅い時期の開始を予定していたが、新型コロナ流行に伴う需要増に対応し、立ち上げ時期を前倒しした。

ヘリウムは5月、中国のインターネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)などの投資家から1000万ドル(約10億6000万円)を調達した。幹部によると、病院や診療所など数十カ所が契約を結んだという。

ラゴスのビクトリア島で診療所を運営するンゴジ・オニア氏によると、ヘリウム・ヘルスへの支払いは月15万ナイラ(394.22ドル)。オンライン診療の料金は1件当たり1万ナイラと対面方式の半分で、患者のほとんどがオンライン方式を選ぶという。

民間資金も流入

新型コロナ流行前から公共医療の専門家や投資家は以前から、人口が急増するアフリカの医療需要への対応に遠隔医療が役立つと考えていた。アフリカで医療サービスを提供するハイテク企業には、開発機関やベンチャーキャピタルからも資金が流れ込んでいる。

米サンフランシスコに拠点を置く投資会社パートテックのデータによると、ベンチャーキャピタルからアフリカの医療ハイテク企業への資本投資は昨年が1億8900万ドルと、17年と18年のそれぞれ2000万ドル前後から大幅に増加。新型コロナ流行による混乱にもかかわらず、今年上半期は約9700万ドルに達している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シンガポール航空機、乱気流で緊急着陸 乗客1人死亡

ビジネス

トヨタ、米テキサス工場に5億ドル超の投資を検討

ワールド

米国務長官「適切な措置講じる」、イスラエル首相らの

ビジネス

日産、米でEV生産計画を一時停止 ラインナップは拡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中