最新記事

日本的経営

【IT企業幹部・厚切りジェイソン】アメリカの営業マンが外回りせずに2億円稼ぐ理由

WHY JAPANESE SALESPEOPLE!?

2020年7月21日(火)19時12分
藤田岳人(本誌記者)

200721aj2.jpg

車社会なこともあり、アメリカでは夜の接待は多くない KAZOKA30/ISTOCK


――次に営業の手法について、日本では「足で稼ぐ」といってフィールドセールスを重視する文化がある。
アメリカが根本的に違うのは、国が広いので簡単に訪問できないこと。だから電話でいいという意識になる。また理由もなく「ご挨拶」などと会いに行くのは、相手の時間を奪うので失礼になる。

――では、接待はアメリカにもあるのか。
日本ほど多くないし、あってもビジネスランチが多い。そもそも車社会なので、夜に外でお酒は飲めない。また仕事の後は家に帰って家族で食事をし、その後でメールのチェックなど少し仕事をすることが多いので、接待でベロベロになるとどちらもできなくなる。

休みの日に仕事仲間とゴルフに行く人はいるが、日曜にはやらない人も多い。家族で教会に行くことを大事にする人が多いからだと思う。

――飛び込み営業はどうか。
基本的に無視される。昔はあったかもしれないが、今は時間の無駄だと相手にされない。断るのも大事なスキルだと考えられていて、何でもやろうとすると、時間が足りずに結局は何もできなくなる。アポを取ってプレゼンに行っても、興味がないと判断されれば5分で席を立たれることもある。

ただ、はっきり興味がないと言うことで、相手は提案内容を変えられる。本当は興味がないのに「うんうん」と聞いていると、正しい提案のチャンスがなくなる。不満を言うことで、不満が解決される。

――飛び込み営業をしないアメリカでは、どうやって新規顧客を開拓しているのか。
口コミや展示会が多い。さらには、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)といった専門分野に特化している人たちが、自分からビジネスを改善できる最先端のモノを常に探し求めている。

そのため、商品やサービスをアピールする内容の報告書やホワイトペーパー、ブログなどをネットで発信していれば、向こうから見つけてくれる。アメリカでは、こうしたやり方が主流ではないか。

――日本の営業手法の根底には人と人との関係を重視する姿勢があると思うが、アメリカではどうか。
アメリカの場合、「この人を助けてあげよう」などという気持ちはないケースが多い。営業マンはコミッション(手数料・歩合)のために頑張っているのだと、相手も分かっている。だからモノを重視し、本当にうちに必要かどうかで判断する。

個人的には、時代に合っていないやり方やモノは、淘汰されていくのがいいと思う。それによって、その人が別のより価値のあるものを作れれば社会全体が豊かになる。ダメなものなのに助けてしまうと、ダメなままで残ってしまう。

――日本企業も海外の企業に営業するなら、やり方を変えなければならないのだろうか。
売られる側のやり方に合わせる必要がある。アメリカ企業も、日本企業に営業をするならアメリカのやり方ではうまくいかない。僕はそれで失敗した。

――自分が日本企業から売り込みを受ける場合はどうか。
アメリカ式で受ける。興味がなければすぐに断るし、すぐ席を立ったこともある。「買う可能性はゼロだからやめましょう」と。

【関連記事】韓国コンビニも営業時間短縮、しかし日本とはかなり事情が異なる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中