最新記事

韓国社会

韓国、新型コロナ対応で公務員からサムスンまで「ステイホーム試験」

2020年6月23日(火)08時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

救済措置に不公平とのクレームも

ところが、他の未感染受験者からすると、20~30人が1部屋で緊張状態で受ける試験と、たとえ監視員たちがいたとしても、自宅でリラックスして受ける試験は違うはず。これは不公平だという声が上がった。

公務員試験に臨む人々の情報交換場所となっているオンラインコミュニティーサイトでは、この対応策が政府から発表された直後から反対意見が多く寄せられ、中には「それならいっそのこと、自分もコロナに感染したい!」などという意見もあった。

また、韓国大統領府の公式サイトに設置され、国民が要望を投稿できる国民請願掲示板には、新型コロナウイルス感染拡大がひとまず落ち着くまで、公務員試験の試験延期を求める声も投稿されていた。

1人の受験者のために中学校舎貸し切り

注目を集めた今年の試験だったが、13日朝10時から韓国内700カ所で100分間、公務員試験が実施され、事前に自宅隔離状況を申請した3名に特別処置対応がとられることとなった。慶尙北道地方では、自宅隔離者1名のために廃校になった元中学校校舎を貸し切りにし、教室1部屋を1人で使う方法で受験できるように対処したという。

慶尙北道は「この受験者は、陰性判定が出ていたが、14日間の隔離期間まで数日残っていたため、万が一の事を考え廃校での受験対応を取った」としている。このほかに、京畿道の地方公務員受験者1名と、仁川市の教育省公務員受験者1名は、事前に政府がアナウンスしたように、自宅での受験が行われた。

試験数日前の突然の発表に一部から混乱する声が上がったが、実は自宅での公務員受験に前例がなかったわけではない。2015年6月27日中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大が心配されるなかで行われた公務員試験では、計5名が自宅隔離で試験を受けていた。このときも、今回同様、警察や看護師ら4名1組体勢で自宅での受験生の監督が行われたという。

公務員試験以外でも、新型コロナの影響で入社試験を自宅試験に切り替えた企業が存在する。韓国を代表する大企業であるサムスン電子だ。

サムスンは、大学生の就職希望先として圧倒的な人気があり、入社試験も「サムスン職務適性検査(Global Samsung Aptitude Test)」という名称で毎年10万人が受験しニュースに取り上げられるほどだ。その試験が今年は新型コロナの感染予防のため、5月30・31日の午前と午後計4回に分けて、受験者の各自宅で行われた。

しかし、ここで問題となったのが、カンニングへの防止対策だ。


【関連記事】
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・アメリカが接触追跡アプリの導入に足踏みする理由
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円が対ドルで5円上昇、介入観測 神田財務官「ノーコ

ビジネス

神田財務官、為替介入観測に「いまはノーコメント」

ワールド

北朝鮮が米国批判、ウクライナへの長距離ミサイル供与

ワールド

北朝鮮、宇宙偵察能力強化任務「予定通り遂行」と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中