最新記事

コロナ危機後の世界経済

中国経済は本当に世界を「V字回復」へと導けるのか?

CAN CHINA LEAD THE RECOVERY?

2020年4月1日(水)17時15分
キース・ジョンソン

中国はもちろん、当初の流行への対応を模範的と称賛された香港や台湾、シンガポールでも制限解除の直後、ウイルス感染の第2波に見舞われた(多くの場合、国外からの渡航者や帰国者が新たにウイルスを持ち 込んでいた)。こうした経緯はアメリカ、ドイツやイギリスなど、封鎖措置の経済的コスト(や政治的な実用性)と、国内活動を一部正常化した場合の人的損害をてんびんに掛けようとする国に警鐘を鳴らしている。

「中国の事例は通用しない。欧米では個人の自由をより重視し、政府の統制がそれほど厳しくない。そのた め、経済活動をどこまで犠牲にするべきかという論議がより多く起きている」と、ブルックスは言う。

だが、より大きな問題がある。中国経済の一部は回復を見せてはいても、特に高額商品への支出を消費者が控えるなか、経済の大部分はまだ持ち直してはいない。

さらに、中国が最悪の局面を抜け出し始めたとしても、主要な輸出先で貿易相手である欧州各国やアメリカが感染の急拡大のただ中にある状況では、回復の出鼻をくじかれることになりかねない。

「現時点で懸念しているのは、欧米に迫る景気後退の(消費者支出に与える)影響だ」と、ポールソン研究所の研究フェロー、宋厚沢(ソン・ホウツォー)は話す。

理論上、今年初めの経済的打撃は消費者が購入を延期した結果であり、 この典型的な繰り延べ需要はこれから爆発的な購買行動となって成長を押し上げるはずだ。だが「今までのところ、需要は以前の水準になかなか戻っていない」と、宋は指摘する。

よみがえる金融危機の記憶

宋の予想では、今年後半に大幅成長を記録するどころか、中国の行く手にはさらなる暗雲が待ち構えてい る。「第2の減速がやって来る。今年1月や2月ほど深刻ではないが、無視できない規模になるだろう」

中国の回復傾向の分かりにくい点は、自動車メーカーが通常どおりに戻っている一方で、自動車販売店はそうではなく、消費者が自動車を購入していないこと。工場は再開されても、輸出先の市場は閉鎖中だ。だからこそ、見極めが難しい。

「パターンにむらがある。生産サイドは活況を呈しているが、消費サイドはずっと軟調に見える」と、英調査会社キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミスト、ニール・シアリングは言う。「V字回復が起こるかは断言できない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、中国製ブリキ鋼板の反ダンピング調査開始

ワールド

イスラエルはガザ停戦努力を回避、軍事解決は幻想=エ

ワールド

「英国を再建」、野党・労働党が選挙公約 不法移民対

ワールド

マレーシアGDP、第1四半期は前年比4.2%増 輸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中