最新記事

農産物

パンデミックの次は食糧危機の懸念──国境封鎖と食品サプライチェーン崩壊で

2020年4月14日(火)18時00分
モーゲンスタン陽子

季節の野菜を地産地消することになると、価格は高くなる...... 写真:モーゲンスタン陽子

<ヨーロッパでは、国境閉鎖や移動制限による搬送手段と人出不足で、農作物の価格が高騰しはじめている>

各国の新型コロナ対応策が一進一退するなか、すでに次の危機が懸念されはじめている。WHOや国連などが先日、来る食糧難を警告した。

生産量が問題なのではない。国境閉鎖や移動制限による搬送手段と人出不足、そしてライフスタイルの変化によるものだ。たとえば、欧州で人気のスナックといえば断然フライドポテトだが、外食産業の営業縮小によりオランダでは何百万トンのじゃがいもが余剰となっている。他方、東欧などからの季節労働者が来られないため、作物収穫の手が足りず、農作物の価格が高騰しはじめている。

穀物の大生産地であるインドやロシアでは、国内での消費量確保のため、すでに輸出を制限し始めている。

地産地消するなら高価格でも仕方ない?

外出制限が出されてそろそろひと月が過ぎようとしているドイツだが、スーパーマーケットでは相変わらず緊張感がない。マスク姿はほぼ見られない。メルケル首相の演説でも買い出しは一人で素早く済ませるよう奨励されているにもかかわらず、店内は家族連れやカップルでいっぱいだ。ぺちゃくちゃしゃべる人たち、すぐそばまで近寄ってくる人たちも多い。レジ前では床の印に合わせてかろうじて距離をとってはいるものの、横入りされないか皆心配でたまらないようだ。ソーシャル・ディスタンシング(社会的・身体的距離の確保)が奨励されるようになるずっと前から、ヨーロッパでは北米のように十分なパーソナルスペースを取る習慣がなかった。在欧16年にして筆者が未だに慣れない点だ。

大手スーパーなどの食糧配達サービスもあるが、注文が殺到して配達不可能、あるいは数ヶ月先と、ほぼ機能していない状態だ。そこで、スタートアップなどの小規模のデリバリーサービスが大量に登場してきている。筆者も、地元のオーガニック野菜のデリバリーサービスを利用してみた。10日後に届いた21ユーロ相当のボックスに入っていたのは、巨大なじゃがいも6個、しなびかけた人参5本、小ぶりのきゅうり2本、根セロリとバターナッツスカッシュ(かぼちゃの一種)各1個、スイートペッパー2個、それにあまり新鮮ではない小さなキャベツ1個。

キャベツ以外の葉野菜が全くないこと、それに価格にまず憤慨した。スーパーならこの3分の1以下の値段で済むだろう。しかし、そこで思い直した。季節の野菜を地産地消するなら、もしかしてこれが適正な価格と内容なのだろうか? 

東欧からの季節労働者が不足し、収穫できず

ロックダウンされてからの南ドイツは残酷なほどの晴天が続いている。そのわりには人々は外出禁止をよく守っている。イギリスやフランスでは「禁止破りの密告」なども多くギスギスした雰囲気もあるようだが、こちらでは家族の訪問などの違反には目を瞑る人も多いようだ。ただ、フランクフルトでは公園を取り締まっていた警官が逆に襲われるという事件もあった(ドイツの警察はアメリカやカナダと違って高圧的ではない。自分も市民の一員だという意識が高いのだろう)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中