最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染拡大がもたらす株価暴落と世界封鎖

Get Ready for Closed Borders and Crashing Markets

2020年2月25日(火)19時15分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌シニアエディター)

欧州にも封鎖が飛び火した(2月21日、レッドゾーンに指定されたイタリア・ロンバルディア州サン・フィオラーノ) Marzio Toniolo/REUTERS

<「パンデミックもありうる」と認めたWHOの発言と共に、世界の株式市場は暴落した。もし新型コロナウイルスが2020年最大のニュースになるとしたら、世界はこれから何に備えればいいのか>

新型コロナウイルスの感染拡大で、世界経済への影響が当初の想定よりも深刻なものになりそうだという見方が強まり、2月24日は世界的に株価が大きく下落した。WHOは同日、パンデミック(世界的な大流行)の状態には「まだ至っていない」としつつも、今後パンデミックに発展する可能性は高いとの認識を示した。

専門家の間でも、徐々にこうした見方が強まっている。この1週間の間に、韓国やイラン、イタリアといった複数の国で感染者が急増。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の発生源とされる中国とのつながりがなくても、感染が確認される例が増えている。また恐ろしいことに、感染例が少ない国でも死者が出ており、まだ明らかになっていないさまざまな感染パターンがあることが伺える。

ゴーストタウンと化したイタリアの観光地


もしそうなら、新型コロナウイルスの感染拡大は2020年の最重要問題となるだろう。世界がこれほどの規模の感染症に直面したことは、ここしばらくなかった。

1968年に流行した香港風邪は、世界で約100万人の死者を出したが、今回の新型コロナウイルスに比べると死亡率はかなり低いように思える。今回のウイルスの死亡率(感染者が死亡する率)はまだ定かではないが、1918年に大流行して5000万人を超える死者を出したスペイン風邪と同程度になりそうだ。当時に比べて医療技術は大きく進化しているものの、グローバル化と人口増加が進んだという点では感染症に対してより脆弱になっている。

新型コロナウイルスの感染拡大がさらに深刻化した場合、世界はどうなるのか。最初に感染拡大の打撃を受けた中国の例を基に予想するとこうなる。

<参考記事>新型コロナウイルス、急拡大の背景に排泄物を介した「糞口感染」の可能性も

1.世界封鎖

中国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて7億人を超える人の移動を制限し、このうち1億5000万人に対して自宅待機を義務づけた。現在は、経済の崩壊を防ぐために、これらの制限措置を緩和して人々を仕事に戻そうとしているが、湖北省武漢市ではいったん発表された封鎖緩和がわずか3時間後に撤回されるなど、混乱が生じている。北京や上海の街頭も依然、閑散とした状態が続いている。

都市封鎖は既に中国経済に打撃をもたらしつつある。指導部が各種工場の再開を促しているのもそのためだ。各企業の売り上げは大幅に落ち込み、小規模企業は既に破たん寸前の状態だ。中国の港を出港する貨物船には、ほとんど貨物が積まれていない。

事態がさらに悪化すれば、その打撃は中国以外の国にも及ぶことになる。中国からの輸入に頼っていた諸外国の企業は既にサプライチェーンの混乱に見舞われており、それが経済の中枢を脅かしているケースもある。24日の世界的な株安も、まだ感染拡大のリスクを完全には織り込んではいない可能性があり、今後の状況次第ではさらなる暴落も予想される。

<参考記事>遂に「日本売り」を招いた新型肺炎危機──危機を作り出したのはウイルスでも政府でもなくメディアと「専門家」
<参考記事>米国務省、ウイルス感染広がる日本・韓国を渡航警戒レベルを引き上げ 「継続的な市中感染が報告されている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中