最新記事

仮想通貨

仮想通貨の扱いが、日米の会計基準で大きく異なるのはなぜか

2020年1月29日(水)12時16分
木村兼作(公認会計士)

■クリプト・アセットはUSGAAPでは無形資産として会計処理される

上述のとおり、ガイダンスのQuestion 1は現金で購入したクリプト・アセットをどのように会計処理すればいいかについて回答しています。そこでの結論はビットコイン、ビットコイン・キャッシュ、イーサリアムのようなクリプト・アセットは無形資産として処理すべき、としています。

FASB ASC Master Glossaryにおいて無形資産は次のように定義されています:
"物的な実態の存在しない資産(金融資産除く)"

そして、これらのクリプト・アセットはUSGAAPにおける他の資産の定義に該当しないため無形資産以外の資産として会計処理することは適切でない可能性があるとしています。以下で、クリプト・アセットが他のそれぞれの資産になぜ当てはまらないかを、見ていきます。

現金あるいは現金同等物
クリプト・アセットがリーガル・テンダー(法定通貨)として国家による裏付けがない場合、現金同等物の定義に該当しないとしています。

金融商品あるいは金融資産
クリプト・アセットが現金でなく、法人の持分でなく、現金あるいは他の金融商品を受け取る契約上の権利でない場合は金融商品あるいは金融資産の定義に該当しないとしています。

棚卸資産
クリプト・アセットは通常の営業活動における売却のために保有される場合もありえるが、有形資産ではないため棚卸資産の定義に該当しないとしています。

■USGAAPで無形資産はどのように処理するか

無形資産は耐用年数が確定できる場合はその期間に応じて償却しますが、クリプトの場合は耐用年数が決定できない場合がほとんどです。その場合は非償却無形資産に該当し毎期の償却は行いません。

そしてこれが一番のポイントになりますが、クリプトの時価が値上がりしても時価評価しません。日本の会計基準ではクリプトは基本的に時価評価することになるため大きな違いとなります。

では保有するクリプトの時価が取得原価を下回った場合はどうするか。この場合は減損を検討することになり、基本的には簿価の切り下げを行います。USGAAPでは減損の戻入は認められていないため一度切り下げた簿価は時価が回復しても切り上げることはしません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 6

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中