最新記事

イラン情勢

イラン、核合意の制限放棄で深まる核危機

Iran Fully Withdraws From Nuclear Deal and Criticizes Europe

2020年1月6日(月)18時30分
ジェイソン・レモン

「無謀さを増すアメリカの行動がきっかけでイランは核合意の順守をやめた。そこから分かるのは、核保有大国に好き勝手をさせるのがいかに危険かということだ。この負のスパイラルは人道的な悲劇につながりかねない」とフィンは述べた。

「ブレーキを踏むなら今しかない」ともフィンは述べた。「両国ともにイラン核合意の完全履行に戻らなければならない」

イランは現時点では核兵器を保有しておらず、開発には少なくともあと1年はかかるだろうというのが専門家の見方だ。イラン政府上層部は核兵器開発の意図を繰り返し否定するとともに、核技術の平和利用への意欲を示してきた。だがアメリカは一貫して、イランが軍事目的で核開発を進めていると非難してきた。

イランの最高指導者アリ・ハメネイの軍事顧問を務めるホセイン・デフガンは5日、スレイマニ殺害への報復としてイランはアメリカの軍事施設を攻撃する計画を立てているとCNNに語った。

「戦争を始めたのはアメリカのほうだ。だから、自分たちの行為に対する当然の反応を受け入れるべきだ」とデフガンは主張した。

「予期した時には起きず、起こるだろうと思った場所には来ない」

だが国際情勢分析サイト『ジオポリティカル・フューチャーズ』の創立者兼会長のジョージ・フリードマンは、イランが近いうちにアメリカに対する攻撃を成功させるとの見方には懐疑的だ。

「特殊部隊のトップとともに情報機関のトップも死んだのだから、立て直しには時間がかかるだろう。クッズ部隊は通常、隠密行動を取るが、報復は建物とか群衆とかいった目立つものを狙わなければならない」とフリードマンは言う。「(報復攻撃は)予期した時には起きず、起こるだろうと思った場所には来ないのが普通だ」

トランプは4日、ツイッターで報復を行わないようイランに警告を発した。軍事報復が行われた場合に備え、アメリカは52カ所の標的のリストを用意しているというのだ。

「アメリカは軍備に2兆ドルを費やした」と、トランプはツイートで述べた。「われわれ(の軍隊)は世界で最大、そしてまさに最良だ! もしイランがアメリカの基地やアメリカ人を攻撃すれば、ピッカピカの新品兵器を送り込むだろう......ためらうことなく!」

(翻訳:村井裕美)

20200114issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中