最新記事

中国

日本を誤導──安倍首相「国賓招聘のため」習主席と会談

2019年12月26日(木)14時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

安倍首相と習近平国家主席(2019年12月23日、北京) Noel Celis/Pool via REUTERS

23日、安倍首相は、将来日本に災禍を招く習近平国賓再確認のため、北京で習近平と会談した。言葉だけで日本側の立場を主張しても意味がない。本気なら国賓招聘を直ちに中止しなければならない。その勇気を持て。

会談内容の欺瞞性

安倍首相は12月23日、日中韓首脳会談が開かれる中国四川省成都に行く前に、わざわざ北京に立ち寄り、習近平国家主席と会談した。目的は習近平の国賓としての来日を再確認するためだ。

日本側から見た会談内容に関して、まず日本の外務省の報道を見てみよう。

12月23日付の外務省HPには「習近平・国家主席との日中首脳会談・夕食会」という見出しで、会談内容を10項目に分けて報じている(以下、外務省報道)。

その内、気になる項目に関して分析する。

一、尖閣問題:外務省報道の「2 日中関係総論」と「3 海洋・安保協力」

12月13日付コラム「習近平を国賓として招聘すべきではない――尖閣諸島問題」に書いたように、2008年5月7日に、日本を公式訪問した当時の胡錦濤国家主席と福田康夫総理との日中首脳会談において両者が「認識を一つにした」というのと同じ、「呪文」のような文言があるだけだ。この「友好的呪文」を発した半年後の2008年12月8日に、中国公船が初めて尖閣諸島周辺の我が国領海内に侵入したことは同コラムに書いた。その後領海侵犯に関する頻度の凄さも、同コラムのグラフに描いた通りだ。

つまり、まず「尖閣問題」に関して、安倍首相が、このような「友好的呪文」を発しても如何なる効果もなく、本気なら「この問題が解決されない限り、習近平国賓招聘はあり得ない」としなければならない。中国は日本の「朝貢」にも似た低姿勢を見て、ますます大胆な行動に出るだけで日本の尊厳を蝕んでいく。

二、経済協力:外務省報道の「5 経済・実務協力」

外務省報道の「5」をご覧いただければ明らかなように、安倍首相の発言だけしか書いてない。実は後述するように、この問題に関しては習近平国家主席が「一帯一路に関する第三市場における協力」という言葉を発し、安倍首相は「一帯一路」というワードだけをカットして「第三市場での協力」という言葉で習近平の要望に応えている。

つまり、「一帯一路に協力します」と回答したに等しい。これは2018年11月28日付コラム<安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録>に書いたように、安倍首相は同年10月25日に中国を国賓として訪問した時に、「一帯一路は潜在力のある(ポテンシャルの高い)構想で、日本は第三市場での共同開拓をも含みながら、中国側とともに広範な領域で協力を強化したいと願っている」と語っていることからも、「第三市場」という表現は「日本の一帯一路協力方式」を指しているのは明らかだ。しかし、安倍首相自身が「一帯一路」というワードだけは避けて、「第三市場」とのみ表現することによって、アメリカの対中包囲網を裏切っていないかのように見せるのは「虚偽のポーズ」としか言いようがない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中