最新記事

ウクライナ疑惑

弾劾調査に大きなヤマ場、反トランプ証言を全米にライブ中継

Now the Public Gets to Decide on Impeachment

2019年11月13日(水)15時55分
エイミー・マッキノン

下院情報委員会の有力メンバーであるデビン・ヌネス議員(共和党)は9日に、共和党が出席を望む証人候補のリストを発表した。それを見ると、共和党はウクライナ疑惑に関して、トランプ側近のジュリアーニが主張する陰謀論に加担するつもりであることがわかる。

民主党が証明しようとしているのは、トランプ陣営が自らの選挙を有利に運ぶためにウクライナに圧力をかけ、弾劾に値する罪を犯したということだ。だがヌネスはハンター・バイデンの証言や、クリントン選挙対策本部で働いていた民主党全国委員会(DNC)の元職員アレクサンドラ・チャルパなどの証言を要請。ウクライナ疑惑と言われる汚職が実際にあったと証明しようとしているようだ。

共和党はまた、DNCの要請で2016年の選挙に干渉しようとしたのはロシアではなくウクライナだというトランプの主張を証明しようとしている。だがこの主張はアメリカの情報当局によって虚偽であることがすでに証明されている。

民主党が多数を占める委員会が、共和党が要求する証人を一部でも承認するかどうかはわからない。10月31日の下院決議では、共和党側が証人を呼ぶことを認めているが、そのためには民主党議員による承認が必要となる。

共和党議員の質問を聞くときは、問題の矛先をジョー・バイデンに向け、証言する政府高官が「反トランプ派」だという印象を与えようとして証拠のない議論を展開し、話を歪曲していないか、注意してほしい。

新しい情報は期待薄

公聴会の場面はこの先もずっと、アメリカ人の集合意識に焼き付けられる可能性が高い。だがウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にバイデン父子の汚職を捜査させるために、トランプが軍事援助やホワイトハウスへの招待など、自身の政治権力を利用したかどうかについての重要な新しい情報が飛び出すことは期待できないだろう。

公聴会は、両党の議員がメディアの見出しになるような発言を競い合い、相手をやりこめて世論の支持を勝ち取ろうとする戦いになる可能性が高い。

今回出席する証人たちが、非公開証言で言わなかったことを言いだす可能性はまずない。前回の証言では、12人以上の現役および元政府局者が全員、対ウクライナ外交の裏チャンネルを築いた大統領の側近らの行為について非常によく似た内容を語っている。

民主党は弾劾手続きのスケジュール確定には慎重だが、調査は年内にまとめたい意向を表明している。大統領の弾劾成立に十分な証拠をすでに確保しているか、弾劾の手続きが長引いて、2020年の大統領選挙戦まで引きずってしまうことを恐れているのかしれない。

その後、弾劾手続きは民主党主導の下院を離れ、共和党が多数派の上院に移る。上院では、共和党内部で劇的な変化が起こらない限り、弾劾成立に必要な議会の3分の2の票が集まることはなさそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港中銀、政策金利据え置き 米FRBに追随

ワールド

米副大統領、フロリダ州の中絶禁止法巡りトランプ氏を

ワールド

シンガポールDBS、第1四半期は15%増益

ワールド

台湾のWHO総会出席、外相は困難と指摘 米国は招待
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中