最新記事

軍拡競争

米中ロの歯止めなき核軍拡時代まであと2年

Russia Prepares Weapons 'No Other Country Has,' U.S. Says It 'Must Address'

2019年11月7日(木)15時30分
トム・オコナー

「アメリカは何十年も前から極超音速システムの研究で世界をリードしてきたが、その技術を兵器に導入する選択はしてこなかった」と、米国防総省のロバート・カーバー報道官(空軍中佐)は本誌宛てのメモで述べた。「我々と敵対しようとする者たちは、それを兵器に導入することを決めた。それによって戦闘能力のバランスが崩れており、対処が必要だ」

「国防総省としては、極超音速兵器の実戦配備を最優先課題としている」と彼はさらに続けた。「我々は今後も、すべての戦闘領域において将来的にも支配的な地位を維持していくために、揺るぎない能力の構築に取り組んでいく」

米ロが互いに不信感を募らせるなか、2019年には両国が冷戦時代に交わした中距離核戦力(INF)全廃条約が失効した。INF条約は射程距離が500~5500キロの地上発射型ミサイルの廃棄を定めていたが、アメリカは、ロシアが新たに9M729巡航ミサイルを配備したことが条約違反にあたると主張。一方のロシアは、アメリカが東欧に配備したミサイル防衛システム「イージス・アショア」は攻撃に転用が可能だと米政府を非難した。

最終的にアメリカは8月にINF条約を脱退。そのわずか数週間後には(INF違反にあたる)地上発射型巡航ミサイルの発射実験を行った。これを受けてロシアと中国は、アメリカが「軍拡競争」を引き起こそうとしていると非難した。

遅すぎた軍縮提案

ドナルド・トランプ米大統領は5月、「現在ロシアと中国との間で、大規模な軍縮協定の締結を目指している」と言い、「とりわけ核兵器については、両国とも協定の締結に前向きだ」と語った。だが核軍縮を支持しているのはロシアだけで、中国は反対だ。米ロに比べて少ない核兵器を増やしいてる最中だからだ。

「中国の立場ははっきりしている」と、中国外務省の耿爽報道官は5日の会見で語った。「3カ国間での軍縮交渉は存在しない。アメリカは以前からこの問題に中国を巻き込もうとしている」

アメリカとロシアは、世界のどの国よりも遥かに多くの核兵器を保有している。その備蓄数を制限している新戦略兵器削減条約(START)が2021年に失効予定だが、これまでのところ後続条約についての交渉はまとまっていない。このままでは核兵器を禁止・制限する条約はなくなり、各国が何の歯止めもないまま開発競争を繰り広げる時代がやってくるだろう。

(翻訳:森美歩)

20191112issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月12日号(11月6日発売)は「危ないIoT」特集。おもちゃがハッキングされる!? 室温調整器が盗聴される!? 自動車が暴走する!? ネットにつなげて外から操作できる便利なスマート家電。そのセキュリティーはここまで脆弱だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑

ビジネス

NY外為市場=ドル指数落、利下げ期待で 円は軟化

ワールド

ハマス、ガザ休戦案受け入れ 「合意まだ」とイスラエ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中