最新記事

イラン

有志連合の結成に「時間が必要」なのは、支持しているのは韓国ぐらいだから

U.S. Struggles to Get Europe's Help As Iran and Russia Plan Military Moves

2019年7月31日(水)18時30分
トム・オコナー

イラン海軍指揮官のホセイン・ハナディ提督は7月29日、イラン軍は共同軍事演習を行うためにインド洋でロシア軍と合流したことを明らかにした。演習は「オマーン湾、ホルムズ海峡、そしてペルシャ湾からインド洋北部」でまもなく行われる予定だ。

ハナディ提督は、ロシアとの軍事協力に関する覚書に署名した後、「これはロシアとイランの関係にとって転機とみなされるだろう」と述べた。

イランのバルベツ・サリミ・パナヒ海軍大将は30日、地元のラジオ局でこう語った。「海上の安全保障は経済的戦略的に常に重要であり、海の安全保障に真剣に取り組む国々は、世界秩序に大きな影響を与える」と述べた。「ロシアの存在が効果を上げることは間違いない」

ロシアとイランは、共にシリアのアサド政権に軍事支援を行ってきた国同士。中国もその仲間だ。イランのモハメド・ジャバド・ザリフ外相は30日、テヘランを訪れた中国共産党中央対外連絡部の宋濤部長と会談を行った。会談の中で両者は、「あらゆる分野におけるイランと中国の友好関係」を確認すると共に、「国際法や規則に違反するアメリカの一方的な政策、および世界に自らの覇権を強要する米政府の企み」について協議したという。

EU、フランス、ドイツ、イギリスはイランに対し、強硬派のアメリカと比べるとはるかに外交的なアプローチを取ってきた。アメリカによる対イラン制裁を迂回するための特別目的事業体(SPV)も創設した。もっとも、SPVを通じた取引はおおむね人道支援関連に限られており、孤立を深めるイラン経済の支援にはほとんど役立っていないが。

ただしイギリス政府だけはここへきて、イランに対する強硬姿勢を強めている。7月4日、英海兵隊は英領ジブラルタルでイランのタンカーを拿捕した。EUの制裁対象であるシリアに原油を運ぼうとしていた疑いからだ。これに対してイランの革命防衛隊は7月19日、ホルムズ海峡でイギリス船籍のタンカーを拿捕。イランとイギリスのタンカーは、いずれも相手国に拿捕されたままだ。イギリス外務省の高官および駐英イラン大使はどちらも、両国のタンカーの交換について、その可能性を否定している。

結局、アメリカによる「有志連合」への参加呼び掛けに積極的に応じたのは、今のところ韓国だけだ。フランスのジャン・イブ・ルドリアン外相は先週、イランに「最大限の圧力」をかけるというトランプ政権の方針とは「反対の方向」を目指していると言った。

(翻訳:栗原紀子、ガリレオ)

20190806issue_cover200.jpg
※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中