最新記事

予防接種

保護者の意思に反して自らワクチン接種したアメリカの高校生が公聴会出席

2019年3月6日(水)16時10分
松岡由希子

両親の意思に反してワクチンを接種した高校生イーサン・リンデンベルガーさん NBC News

<予防接種への躊躇が深刻な問題になっている中、両親の意思に反してワクチンを接種した高校生が公聴会に招致された>

被接種者や保護者に広がる予防接種への躊躇が深刻な問題に

米国では、2019年に入ってからも麻疹(はしか)の感染が拡大し、2月28日までにワシントン州テキサス州イリノイ州など11州で206名の感染者が確認された。

その要因のひとつとして、被接種者やその保護者に広がる予防接種への躊躇や不安感が深刻な問題となっている。このような事態を受け、米国連邦議会上院の保健・教育・労働・年金委員会が、両親の意思に反してワクチンを接種した高校生イーサン・リンデンベルガーさん(18歳)を公聴会に招致したことが明らかとなった。

リンデンベルガーさんは、公聴会への出席に際し、自身のツイッターアカウントで「ワクチンの重要性を証言できるのはうれしい」と前向きな姿勢を示している。

「18歳になりました。どこでワクチンを接種できますか」

オハイオ州ノーウォーク高校に在学中のリンデンベルガーさんは、ワクチン反対を信条とする両親の影響で、ワクチン未接種のまま育った。リンデンベルガーさんは、自らユーチューブに投稿した動画で「僕の母は、ワクチンが人々の健康や社会の安定に役立つとは考えておらず、自閉症や脳障害、その他の合併症を引き起こすものだと信じていました」と述べている。

米国では、オハイオ州を含む17州で、個人的な信条を理由としたワクチン接種の免除が認めてられている

公聴会出席前にYouTubeで思いを語る

成年年齢の18歳に達し、法的な意思表示ができるようになったリンデンベルガーさんは、ワクチン接種について、研究論文やアメリカ疾病管理予防センター(CDC)からの情報などを調べはじめた。2018年11月には、掲示板サイト「レディット」に「18歳になりました。どこでワクチンを接種できますか」という質問を投稿して他のユーザーからの助言を募り、12月には、自らの意思のもと、オハイオ州保健省でワクチンを接種した。

最近の予防可能な疾病が発生している要因が議論される

リンデンベルガーさんは、米紙「ワシントンポスト」の取材に対し、「僕が調べたところ、明らかにワクチンを擁護する証拠のほうが多かったです」と答えている。

2019年3月5日午前10時(現地時間)に開催された上院の公聴会には、リンデンベルガーさんのほか、ワシントン州保健省のジョン・ヴィースマン長官、テネシー大学のジョナサン・マッカラーズ教授らが証人として出席し、最近の麻疹の流行など、予防可能な疾病が発生している要因やその対策などについて議論された。

NBC Nightly News

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国財政、もはや格付けの強みではない 債務増抑制を

ワールド

米最高裁、トランプ氏免責巡り一定範囲の適用に理解 

ワールド

岸田首相、5月1─6日に仏・南米を歴訪

ワールド

原油先物上昇、イエレン財務長官発言で米経済巡る懸念
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中