最新記事

トランプ政権

疑惑のサウジ原発計画に、トランプ娘婿クシュナーの影

2019年2月28日(木)19時00分
クリスティナ・マザ

クシュナー夫妻に寄り添うムハンマド皇太子(17年5月、サウジの首都リヤド) Jonathan Ernst-REUTERS

<国家安全保障を脅かす核技術の移転計画の裏で、トランプ娘婿の怪しげな資金疑惑が浮上>

2月19日、米下院監視・政府改革委員会は、トランプ政権が進めるサウジアラビアへの原発技術の輸出計画について報告書を公表した。民主党主導による調査は、アメリカの国家安全保障を危険にさらすかもしれない重大な懸念を指摘している。

米政府は議会の承認がない限り、核兵器に転用の恐れがある技術を外国に供与することが禁じられている。だが、トランプ政権はこれを回避しようとしているという内部告発もあった。

「トランプ政権とサウジアラビアとのやりとりは秘密裏に行われている」と、エライジャ・カミングス委員長たちは不審点を提示。引き続き、トランプ米大統領が側近やビジネス仲間の経済的利益を国家安全保障よりも優先していないかどうか調査している。

疑惑の人物が次々登場

報告書は、米民間企業の巨大な利権が核機密技術のサウジ移転を推進してきたと指摘し、機密保持が不十分で国家安全保障上のリスクがあると警告している。「企業はサウジ原発の建設と運営契約で数十億ドルを稼ごうとして、トランプ政権と密接かつ繰り返し接触している」

この計画は官民合弁事業を専門とする米コンサルティング会社IP3によって進められてきた。IP3顧問を務め、もともとこの計画の責任者だったのはマイケル・フリン。複数の外国政府との関係についてFBIに虚偽の供述を行ったと罪を認めたトランプ政権の元米大統領補佐官(安全保障担当)だ。

また、トランプの長年の盟友で米大統領就任式実行委員会委員長だったトム・バラックの名前も浮上している。MSNBCニュースの法律アナリスト、ケイティ・パンは「バラックは委員長として1億7000万ドルの政治資金を集めた後も引退せず、政権と親密に関わっている」と言う。バラックは、建設計画の特別代表者とされていた。

バラックはサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)など湾岸諸国と親密で、トランプのビジネス仲間とサウジアラビアを結ぶ重要人物でもある。トランプの娘婿で、中東和平特使を務めるクシュナー大統領上級顧問をサウジアラビアのムハンマド皇太子に紹介したのもバラックだ。ムハンマドはクシュナーが「自分の言いなりだった」と自慢したと報じられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パレスチナ自治政府のアッバス議長、アラブ諸国に支援

ワールド

中国、地方政府に「妥当な」価格での住宅購入を認める

ビジネス

お知らせー記事を削除しました

ワールド

EU、中国製ブリキ鋼板の反ダンピング調査開始
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中