最新記事

中東

風雲急!米主導の反イラン連合にロシアが対抗

Russia Will Host Iran As U.S. Tries To Unite Allies Against It

2019年2月14日(木)18時00分
トム・オコナー

トルコは米政府とも交渉

アメリカとイランはいずれも、イラクとシリアでISIS掃討に貢献したが、イランはアメリカに中東から出ていって欲しいと望み、アメリカはイランが中東で影響力を広げることを警戒している。アメリカは2014年、有志連合を結成してISIS掃討作戦を開始。空爆を行う一方で、地上での作戦ではクルド人を主体とする部隊を主要なパートナーとした。クルド人部隊をはじめ反政府派が支配地域を広げるなか、崩壊寸前のアサド政権を延命させるため、翌2015年にロシアが軍事介入に踏み切った。

以後、シリア政府軍は首都周辺など主要地域の大半を奪還。現在ではクルド人部隊を主体とする「シリア民主軍」が国土の3分の1を支配し、それ以外の反政府派組織は北西部のイドリブ県を掌握するのみとなっている。トルコは自国への内戦の波及を防ぐため、シリア和平のプロセスについてロシアと協議しているが、その一方で、ドナルド・トランプ米大統領とも交渉し、米軍の撤退を求めた。シリア北部で米軍の支援を受けているクルド人勢力を掃討するためだ。トルコは分離独立を目指す国内のクルド人の動きを警戒しており、シリア北部のクルド人部隊もそれと結び付いたテロ組織とみなしている。

EUは反イラン陣営に不参加

シリア政府は、ロシアとイランの軍隊だけが、自国に合法的に駐留する権利があるとみなしており、やはり米軍に撤退を要求。トランプは昨年12月、シリア東部のISISの最後の拠点が陥落したら、米軍を引き揚げると宣言した。米軍撤退を目前に控え、シリア民主軍とシリア政府は和平合意に向けた協議を進めており、サウジアラビアなどアラブ連盟加盟国もイランの影響力を排除すべく、シリア政府と折衝を進めている。

米政府は今回のワルシャワ会議で、反イランを旗印にアラブ諸国の結束を促す意向で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相もアラブ諸国との数十年に及ぶ敵対関係を乗り越え、「イランとの戦争における共通の利益を追求する」と誓った(イスラエル政府はその後、「戦争」という表現を「闘争」と訂正した)。反イラン・キャンペーンを強化するイスラエルにいら立ち、イランの当局者は「死と破壊」で報いると述べている。

ロシアも、来週に予定されているプーチンとネタニヤフの会談を前に、イスラエルのシリア空爆を声高に非難している。

ロシアはワルシャワ会議に招待されたが参加を見送った。EUのほか、アルジェリア、レバノン、パレスチナ自治政府、イラク、カタール、トルコも反イラン陣営の会議には参加を見合わせた。

※ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「ニューズウィークが見た『平成』1989-2019」が好評発売中。平成の天皇像、オウム真理教と日本の病巣、ダイアナと雅子妃の本当の違い、崩れゆく大蔵支配の構図、相撲に見るニッポン、世界が伝えたコイズミ、ジャパン・アズ・ナンバースリー、東日本大震災と日本人の行方、宮崎駿が世界に残した遺産......。世界はこの国をどう報じてきたか。31年間の膨大な記事から厳選した、時代を超えて読み継がれる「平成ニッポン」の総集編です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替、従来より物価に影響しやすいリスクを意識=植田

ビジネス

テスラ、独工場操業を1日停止 地元は工場拡張に反対

ワールド

イランとの核問題協議、IAEA事務局長が早期合意に

ワールド

インド総選挙、3回目の投票実施 モディ首相の出身地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中