最新記事

イラン

イラン、人工衛星の打ち上げに失敗 米国は安保理決議を無視したものだと非難

2019年1月21日(月)17時15分
鳥嶋真也

さらに、宇宙空間で観測や実験をするための観測ロケットの打ち上げも行っており、2013年にはサルを宇宙へ打ち上げ、帰還させたことが大きな話題となった。また有人宇宙飛行計画も進めているとされ、宇宙船の模型などが公開されている。

一方、米国などはかねてより、宇宙開発を隠れ蓑にして弾道ミサイルを開発しているとし、非難を繰り返している。国連安全保障理事会も、2015年に採択した安保理決議第2231号により、イランに対し「核兵器を運搬できるよう設計された弾道ミサイルに関連した活動(そうした弾道ミサイルの技術を使った打ち上げを含む)を行わないことを求める(called upon)」としている。

今回の打ち上げにおいても、事前にその動きを察知していた米国やフランスなどは、この安保理決議と国際社会の懸念を無視するものだとして、打ち上げを中止するよう求めていた。とくにポンペイオ国務長官は今月3日、Twitter上で、打ち上げが行われた場合はさらなる制裁を課すと警告。打ち上げ後も非難するツイートをしている。

一方イランのザリーフ外務大臣は、Twitter上で、「「衛星打ち上げは安保理決議に違反していない(NOT in violation)」と反論している。

かつて安保理決議第1929号などでは、「核兵器を運搬可能な弾道ミサイルに関連した活動」が、明確に「禁止(prohibited)」されていた。しかし2015年、イラン核合意(JCPOA)を経て、これらの決議を廃止し、新たに安保理決議第2231号が採択されたという経緯がある。

この安保理決議第2231号では、前述のように「核兵器を運搬できるよう設計された弾道ミサイルに関連した活動(そうした弾道ミサイルの技術を使った打ち上げを含む)を行わないことを求める」とされており、核兵器を運搬することを目的にしていないミサイル、あるいはそこから派生したロケットであれば問題ないという解釈も通る。また、そうしたミサイルやロケットの開発や打ち上げを「禁止」ではなく「求める(called upon)」とされているため、実際に打ち上げを行っても安保理決議に「違反」したとは言いにくい状況にある。

そのため、ポンペイオ国務長官は「安保理決議第2231号を無視(in defiance of)」、フランスも「安保理決議第2231号に合致しない」といった表現で非難している。

今後米国などがイランに対し、どのような対応を取るのかに注目される。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か

ワールド

OPECプラス、減産延長の可能性 正式協議はまだ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中