最新記事

貿易戦争

米中貿易戦争第3ステージへ 慌てぬ中国、トランプは勝てるのか

Can U.S., Donald Trump Win the Trade War With China?

2018年9月19日(水)19時00分
デービッド・マギー

「米政府の見方とは対照的に、中国は一歩も譲らないだろう。この問題は短い時間で解決できるとは思えない」と、ザリットは言う。「この非生産的な悪循環のなかでは、誰も勝者にはなれない」

自分が関税で中国を攻撃している間、中国は無数の武器でアメリカを攻撃していることを、トランプは理解しているようだ。だが彼は降参するつもりはない。

「中国は、アメリカの選挙に影響を与え、結果を変えようとしたことを公然と認めている。彼らは、私の支持者であるということを理由に、アメリカの農家や畜産家、産業労働者を攻撃した」

9月18日に中国が600億ドル相当の報復措置を発表すると、トランプはツイッターに投稿した。

「中国はわかっていないが、彼ら(トランプ支持者)は偉大な愛国者で、中国が長年にわたってアメリカの貿易を搾取してきたことを理解している」

「彼らはまた、私こそが中国による搾取を阻止できることを知っている。中国が農家や畜産家、産業労働者を攻撃の対象にしたら、中国に対してすばやく強力な経済的報復措置をとる!」

トランプは、中国が報復措置を取り続ける限り、さらなる対中関税引き上げで応じることを明らかにしている。この先も2670憶ドル相当の中国製品に対する新たな追加関税を準備しているとも発表された。トランプ対中国の貿易戦争は、トランプの任期より長く、20年近く続く可能性がある。

時間との戦いは中国に有利

「短期的には、中国、アメリカ、欧州の産業界はたいへんなことになるだろう。この問題は長引く。短期的な解決策は存在しない」と、アリババ・グループ創業者で会長を務める馬雲(ジャック・マー)は、杭州で行われたアリババの投資家向け会議で語った。

トランプが発表した最新の追加関税措置が、今後の米中交渉に与える影響はまだわからない。中国商務省は声明で、アメリカの関税引き上げは「米中間の協議に新たな不確実性をもたらす」と述べた。

この貿易戦争で、トランプの最大の弱点となりうるのは、大統領の任期が限られていることだ(最長で8年)。一方、中国側はその点では心配がない。

トランプは再選される可能性もあるが、1期4年で終わる可能性もあり、すでに任期の3分の1が過ぎている。この貿易戦争に関して言えば、トランプには最低2年、最長で6年しか持ち時間がない。問題は、トランプが勝てるかどうかより、彼が中国より長く持ちこたえられるかどうかだ。

「中国はこの嵐を乗り切るうえで、かなり有利な立場にある。経済は全体としてそれほど輸出に依存しておらず、特に対米輸出への依存度は10年前よりも減った」と、ブルッキングズ研究所の上級研究員デービッド・ダラーは指摘する。「対米輸出額は、経済全体の3%に満たない」

(翻訳 栗原紀子)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中