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アジア大会は成功裡に閉会 開催地のインドネシアはメダル4位の大健闘で2032年五輪立候補へ

2018年9月2日(日)18時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)


インドネシアのウィドド大統領は、大統領宮殿にIOCのバッハ会長、アジアオリンピック評議会のサバーハ会長を招いてオリンピック立候補を目指すことを表明した。 KOMPASTV / YouTube

インドネシア選手の大健闘が後押し

今回のアジア大会で開催国となったインドネシアだが、当初はハノイ(ベトナム)での開催が予定されていた。しかしベトナム政府が2014年に財政難を理由に開催地を辞退したため、ジャカルタ・パレンバンというインドネシアの2都市での開催となった経緯がある。

8月18日の開会式前にジョコ・ウィドド大統領は選手団に対し「最低でも金メダル16個、メダル獲得総合で上位10位以内を目標にして頑張れ」と激励していた。

ところが大会が始まると、各競技でインドネシア選手の活躍が光り、最終的に金メダル31個、銀メダル24個、銅メダル43個で合計98個のメダルを獲得。総合で中国、日本、韓国に次ぐ4位に入る大健闘、大奮闘となった。

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国の中では開催国のメリットはあるとしても、12位のタイ、14位のマレーシア、17位のベトナム、18位のシンガポール、19位のフィリピンなどを大きく引き離した断トツの4位は間違いなくインドネシアが域内のスポーツ大国であることの証左といえる。

こうしたアジア大会での過去最高の成績達成という背景がインドネシアのオリンピック開催地への名乗りを後押ししたといえる。

会見の中でジョコ・ウィドド大統領はバッハ会長、ファハド会長両氏から単に大会の成功だけでなく国民の協力、ボランティアの献身的活動などオールインドネシアによる運営への感謝と称賛が伝えられたとした。

そして「こうした(オールインドネシアの)力こそが、アジア大会よりさらに大きな大会をインドネシアがホストするまさに原動力となる」と述べ、今回の大会で内外に示した国民やボランティア、大会運営関係者などの一致団結の結束力でオリンピックも成功させたいとの強い意志を示した。

ライバルはアフリカ諸国か

IOCのバッハ会長は2018年2月7日に冬季オリンピックが開催される韓国の平昌での記者会見で2022年にユースオリンピックがアフリカで開催されることが承認されたことを受けて「アフリカ諸国で2032年ないし2036年の大会を招致することが可能になることを期待している」と発言、アフリカ諸国の中から開催国が選ばれる可能性に言及している。

だがバッハ会長はこの時、具体的なアフリカの国名には触れなかったことから「単なる外交辞令だったのでは?」との見方もある。

いづれにせよ、東南アジアと同様、これまでオリンピックを開催したことのないアフリカ諸国が今後の開催地選定でアジア・中東域外の強力なライバルとなる可能性は高い状況と言える。

2032年のオリンピック開催地は2018年10月にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる次期IOC総会で決定される可能性もあるとされ、そうなるとインドネシアにとっては残された時間はほとんどないのも事実だ。

多額の財政負担と市民生活への影響などから近年、オリンピック開催に名乗りを上げるのはかつて開催したことのある大都市が多いのも事実。こうした中で「初の開催国」「地域初の開催」など「初」という魅力を都市選定の一つの基準とするなら、東南アジアそしてインドネシアでの開催は2032年には間に合わないとしても、いつかは実現するのは間違いないといえるだろう。


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大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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