最新記事

ビジネス

パリ、トロントに誕生、シリコン売春宿は社会の味方?

‘First Known’ North American Sex Doll Brothel to Open

2018年8月28日(火)16時10分
キャサリン・ハイネット

仏ドリームドール社の工房。ここで受注生産してヨーロッパ各地の顧客に発送する(2014年) Vincent Kessler-REUTERS

<本物の売春宿なら間違いなく違法だが、店主に言わせれば「これはゲームセンター」。性暴力を減らす効果もあると言うのだが>

カナダのトロントと言えば、有名な国際映画祭や、同市出身のラッパー、ドレイクなどが思い浮かぶだろう。しかし9月からは、別のことでもっと有名になりそうだ。「セックスドール相手の売春宿」である。

「オーラ・ドールズ(Aura Dolls)」は公式ウェブサイトで、「世界一のシリコン美女がセックスサービスを提供する、北米初の『売春宿』」だと謳っている。ただし、同種のサービスを提供するライバル店はツイッターで異議を唱えている。

オーラ・ドールズでは、人間そっくりのさまざまなシリコン製ドールを「完全消毒」の上提供する予定。価格設定も幅広く、1体30分の場合は80カナダドル(1カナダドルは約86円)、2体4時間の場合は960カナダドルとなっている。「当店の各種ドールを見て、理想の女性をお選びください」とサイトにはある。

店は9月上旬にオープンする予定だ。風俗店に営業許可を出すのはトロント市だが、地元ニュースメディアのシティニュースによれば、本物の売春宿は違法。「トロント市内に新規店舗が開業する場合は、市の条例と照らし合わせて対応する」と、トロント市の担当者トレーシー・クックは言う。

オーラ・ドールズのマーケティング・ディレクター、クレア・リーは、同店のサービスは匿名で受けられるようになる予定。他の利用客と出くわす心配もないだろうと言う。「スタッフは置かず、カメラだけを設置する。前払い制で、部屋に入って好きなように時間を過ごし、退室するだけだ」

ファンタジーを叶える場所

セックスドールを使った売春宿は最近、ヨーロッパでも議論になっている。フランスのパリでは2018年3月、同市初のセックスドール売春宿「エックスドールズ(Xdolls)」に閉店を求める運動が起きた。フランスでも売春宿は違法だが、同店の経営者はエックスドールズを「ゲームセンター」と称している。しかし反対派は、同店を売春宿とみなし、閉店させるべきだと主張している。

共産党系会派の国会議員二コラ・ボネウラジとエルベ・ベゲは、セックスドールの売春など「女性と男性の関係から人間性を奪う行為だ」と憤った。

反売春を訴える団体ニドのロレーヌ・ケスティオーも同様に、エックスドールズは「女性レイプを模したやりかたで金儲けをする場所だ」と批判した。「フランスでは毎年、8万6000人もの女性がレイプ被害に遭っているというのに」

一方、オーラ・ドールズのリーは、ドールは誰も傷つけずに男性がファンタジーを実現する機会を与えるものだと言う。「このサービスを始めるにあたって私たちが注目しているのは、野蛮で暴力的な空想を抱く男性でも、ドールが相手なら暴力をふるわずに済むということだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国テンセント、第1四半期は予想上回る6%増収 広

ワールド

ロシア大統領府人事、プーチン氏側近パトルシェフ氏を

ビジネス

米4月卸売物価、前月比+0.5%で予想以上に加速 

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 7

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中