最新記事

米欧関係

「G7にアメリカはいらない」と言うマクロンはトランプに勝てるか?

2018年7月9日(月)17時13分
ジェイソン・レモン

今年6月、カナダで行われたG7サミットで顔を合わせたトランプ米大統領とマクロン仏大統領 Leah Millis-REUTERS

<フランスは今、トランプが仕掛ける貿易戦争に対抗する欧州の急先鋒に立っている>

ドナルド・トランプ米大統領の保護主義的な通商政策に対し、欧州は「団結して」立ち向かう、「アメリカとの貿易戦争はすでに始まっているのだ」と、フランスのブリュノ・ルメール財務相は7月8日に宣言した。

今週トランプが、欧州諸国の首脳と会談し、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議に出席するためブリュッセルを訪れることになっているのを念頭に、アメリカのいかなる追加関税に対しても欧州は足並みをそろえて報復する、と語った。

「もし明日、自動車産業に対して新たな関税が課されても、欧州は一枚岩で、主権も持っているということを示す」と、ルメールはロイターに語った。「問題はもはや、貿易戦争が起きるかどうかではない。戦争はすでに始まっている」

米欧は長年にわたって同盟関係を維持してきたが、輸入品に対する追加関税やイラン核合意からの離脱や気候変動に関するパリ協定からの脱退など、トランプが勝手な行動をしてきたのを背景に、緊張が高まっている。

追加関税は自殺行為

6月の初め、トランプは欧州とカナダ、メキシコから輸入される鉄鋼に25%、アルミニウム製品に10%の関税をかけると発表した。欧州諸国、そしてメキシコやカナダは報復関税で対抗したが、トランプはさらに、EU(欧州連合)域内で組み立てられたすべての自動車に20%の関税を課すことも検討すると言って緊張を煽っている。

トランプに言わせれば追加関税の目的は不公正貿易を正してアメリカの労働者や消費者を助けることだが、多くの専門家は逆の事態を招くと主張している。

「EUや中国に追加関税を課してアメリカが経済的にトクするなどあり得ない」と、ミシガン大学ロス経営学大学院のリンダ・リム教授(国際ビジネス戦略論)は6月、本紙に述べた。「諸外国が報復措置を取るかどうかにかかわらず、アメリカの消費者や労働者、企業にとって、追加関税分だけ輸入コストが上がることを忘れてはならない」

「トランプ政権が目指した姿とは正反対だ」と、リムは述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中