最新記事

韓国事情

安全不感症が蔓延する韓国で、在韓邦人の安否を確認する訓練が行われた

2018年7月3日(火)18時20分
佐々木和義

安全不感症が蔓延している?

何か事故が発生すると公共交通機関は安全対策を再確認するが、セウォル号沈没事故から間もない同年5月2日にも地下鉄事故が起きている。午後3時30分頃、ソウル地下鉄2号線の上往十里駅で蚕室駅方面に向かっていた列車が停車中の列車に追突したのだ。後続列車が脱線し、乗客238人が重軽傷を追った。アナウンスや避難誘導はなく、乗客約1000人が線路に降りて避難したという。

道路の陥没事故も多い。2014年7月にソウル近郊の議政府市で歩道が陥没し、歩いていた30代の女性が転落して病院に運ばれた。15年2月にはソウル龍山駅近くのバス停でバスから降りた乗客2名が突然陥没したシンクホールに落ちている。

相次ぐ道路の陥没事故で国土交通部とソウル市は点検を行っていたが、龍山は調査で見つかった41箇所の危険地域に含まれていなかった。

国民やマスコミは安全を政府に要求するが、防災訓練や予防対策に対して国民自身の意識はそう高くないとも言えそうだ。

2010年と2014年に国境で銃撃戦が起きたとき、ソウル市民は何事もなかったように談笑し、北朝鮮のミサイル発射を受けて2017年8月に行われた民間防空退避訓練に参加する国民は少なかった。統制官の制止を振り切ってバスに乗車する人や信号を無視して自動車を走行させる人、仕事にならないと統制官に詰め寄るタクシー運転手もいたという。

サイレンを鳴らして走行する消防自動車の前に割り込む自動車すらあり、安全不感症が蔓延していると中央日報は伝えている。

韓国に居住し、在留届を提出している日本人は約4万人。安否確認システムの運用開始は2017年で、同年11月に日本人会会員1500人余を対象にシステムの運用を兼ねた訓練を行った。2回目となる今回も訓練対象は在韓邦人の4%に満たない。いざというとき役に立つのか不安が残る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUのグリーンウォッシュ調査、エールフランスやKL

ワールド

中南米の24年成長率予想は1.4%、外需低迷で緩や

ビジネス

ユニバーサル、TikTokへの楽曲提供再開へ 新契

ビジネス

海外旅行需要、円安の影響大きく JAL副社長「回復
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中