最新記事

北朝鮮

「エリート女学校長は少女達を性の玩具として差し出した」北朝鮮元幹部が証言

2018年6月7日(木)11時30分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

平壌中心部の万景台学生少年宮殿で体操の練習をする北朝鮮の少女たち Damir Sagolj-REUTERS

先日来、韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の自叙伝『3階書記室の暗号 太永浩の証言』(原題)の内容に言及しているが、同書には実に驚くべき記述があふれている。

たとえば金正恩党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長の粛清を巡っては、1万人余りが連座させられ、粛清されたとされている。太永浩氏によれば、そこには「映画『幹は根から育つ』に出演した女優をはじめ、張成沢の"オンナ"であると見られた何人もの芸能人が逮捕され、姿を消した」という。

ここで言われている女優とは、一時は北朝鮮の銀幕スターだったキム・ヘギョンのことだ。

参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯

彼女の悲惨な運命については、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表も詳しくレポートしており、粛清情報は太永浩氏の証言と一致する。

そしてより驚くべきは、太永浩氏の次の証言である。

「万景台(マンギョンデ)区域にある金星高等中学校の校長も、『中央党5課』に選抜された幼い女学生たちを、張成沢の性のオモチャとして差し出したとの理由で逮捕された」

金星高等中学校は、金正恩氏の美貌の妻・李雪主(リ・ソルチュ)氏も卒業したエリート女学院、金星学院の一部だ。音楽家や舞踊家などを養成しており、海外のスポーツ大会に派遣される「美女応援団」のメンバーも、大部分がここから選抜される。

海外に出る学生たちは当局により厳しいチェックを受けるが、中には違った意味で「管理」される少女たちもいる。それが、「5課対象」と呼ばれる学生たちだ。

ここで言われる「中央党5課」は、要するに「喜び組」などを選抜・管理する部署だ。太永浩氏はこの組織についても詳しく解説しているのだが、それについては次の機会に言及したい。

金星学院の学生たちが、「秘密パーティー」のコンパニオンとして動員されているとの話は、以前から聞いていた。

参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

しかし、ここまで露骨な証言は初めてである。張成沢氏に死刑を宣告した特別軍事法廷は、同氏が数多くの女性と不倫関係を持ち、数百万ドルを海外での博打で蕩尽し、違法薬物を服用したと指摘した。そうした内容を含む判決は全文が労働新聞で公開されており、それを読んだ北朝鮮国民は、張成沢氏個人よりは権力層の腐敗した実態に激怒したとされる。

金正恩氏は叔父に手をかけることにより、はからずも、金王朝の暗部を自ら暴いてしまったというわけだ。


[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

MAGAZINE

特集:遺伝子最前線

2019-1・22号(1/16発売)

革命的技術クリスパーで「超人」の誕生も可能に── 人類の未来を変えるゲノム編集・解析の最新事情

人気ランキング

  • 1

    「お得意様」は気づいたら「商売敵」に 中国の猛追へ対策急ぐドイツ

  • 2

    北方領土が「第二次大戦でロシア領になった」というロシアの主張は大間違い

  • 3

    人の頭を持つ男、指がなく血の付いた手、三輪車に乗る豚......すべて「白夜」の続き

  • 4

    仏マクロン政権「黄色いベスト運動」対応で財政拡大 E…

  • 5

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 6

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 7

    体重600キロ、体長4.4mの巨大ワニが女性殺害 イン…

  • 8

    米政府閉鎖で一カ月近く無給の連邦職員、食料配給に…

  • 9

    タイ洞窟からの救出時、少年たちは薬で眠らされ、両…

  • 10

    地球温暖化で鳥類「血の抗争」が始まった──敵を殺し…

  • 1

    体重600キロ、体長4.4mの巨大ワニが女性殺害 インドネシア、違法飼育の容疑で日本人を捜索

  • 2

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 3

    タイ洞窟からの救出時、少年たちは薬で眠らされ、両手は縛られていた

  • 4

    エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA…

  • 5

    北方領土が「第二次大戦でロシア領になった」という…

  • 6

    人の頭を持つ男、指がなく血の付いた手、三輪車に乗…

  • 7

    インドネシアの老呪術師が少女を15年間監禁 性的虐…

  • 8

    宇宙から謎の「反復する電波」、2度目の観測:地球外…

  • 9

    タイ洞窟の少年たちは見捨てられる寸前だった

  • 10

    NGT48山口真帆さん暴行事件に見る非常識な「日本の謝…

  • 1

    炎上はボヘミアン・ラプソディからダンボまで 韓国の果てしないアンチ旭日旗現象

  • 2

    口に入れたおしゃぶりをテープで固定された赤ちゃん

  • 3

    あの〈抗日〉映画「軍艦島」が思わぬ失速 韓国で非難された3つの理由

  • 4

    小説『ロリータ』のモデルとなった、実在した少女の…

  • 5

    日韓関係の悪化が懸念されるが、韓国の世論は冷静──…

  • 6

    オーストラリア人の94%が反捕鯨の理由

  • 7

    ジョンベネ殺害事件で、遂に真犯人が殺害を自供か?

  • 8

    アレクサがまた奇行「里親を殺せ」

  • 9

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 10

    インドネシア当局、K-POPアイドルBLACKPINKのCM放映…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
「ニューズウィーク日本版」編集記者を募集
デジタル/プリントメディア広告営業部員を募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月