最新記事

東南アジア

マレーシア、マハティール政権が始動 アンワル元副首相に恩赦、ナジブ前首相は実質軟禁状態に

2018年5月16日(水)20時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

歴史的な政権交代をしたマレーシアの野党連合の指導者マハティール氏が首相に就任。かつての盟友で服役中だったアンワル元副首相(写真)が、国王の恩赦を得て入院先のクアラルンプールの病院から釈放された。写真は病院を立ち去る際の同元副首相。クアラルンプールで撮影(2018年 ロイター)

<5月9日に行われた議会下院選挙で政権奪取を実現したマハティール。ナジブ政権が行ってきた政策の見直しなど、新政権が早くも動き出した>

野党連合による勝利で歴史的な政権交代を実現させたマレーシアのマハティール首相が本格的に動きだした。その第1歩として、マハティール前政権を副首相兼財務相として支えながらも政敵として追い落とし、その後、同性愛罪で服役していたアンワル・イブラヒム氏が16日、ムハンマド5世国王の恩赦で釈放され、自由の身となった。

一方で与党連合敗北の責任を追及されて政党指導者の座を追われたナジブ前首相は夫人とともに出国禁止措置となった。クアラルンプール市内の自宅周辺も厳しい監視下に置かれるなど、「勝者と敗者」の明暗がはっきりとわかれる状態になっている。

盟友から政敵、そして和解・共闘した2人

5月16日マレーシア国王から恩赦を受けたアンワル氏は同日午後2時(日本時間同日午後3時)過ぎからクアラルンプールのブキット・スガンブットの自宅で記者会見した。

「自由の空気を吸っている」「自由の意味、価値を実感している」「長い間この正義を待っていた」「明日からの(ラマダンの)断食を家族とともに迎えられることを神に感謝している」などと感想を述べたあと、「マレーシアは新しい歴史の一歩を歩み始めた。マハティール首相と(妻の)ワン・アジザ副首相に1人の国民としてできる限り協力していきたい」と今後の抱負を語った。

今回の恩赦に関しては、国王とマハティール首相に感謝を示すとともに、そういう流れを選択したマレーシア国民への感謝を改めて表した。その一方で「今回の私の恩赦は司法の誤りに基づくもので無条件の釈放である」との立場を明確にした。

またナジブ前首相に関しては「ナジブ元首相をはじめとして誰一人恨んではいない」との姿勢を示した。

アンワル氏の今後の政界復帰に関しては5月15日に東京で行われた「ウォール・ストリート・ジャーナル」の会議にマレーシアからビデオ参加したマハティール首相が「私の首相在任は長くても2年」との見方を示した。

これはアンワル氏にいずれ首相職を譲ることを念頭にしたものだが「首相を退いた後も政治を背後から支えていきたい」と政界を引退するつもりがないことを強調、国民から託された政権に最後まで責任を果たす姿勢を示した。

またアンワル氏に関しては「国会議員選挙を経て他の政党の指導者と同じ立場で政権運営に参加してほしい」との考えを明らかにしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買

ビジネス

中国外貨準備、4月は予想以上に減少 金保有は増加

ワールド

中国、エアバスと航空分野の協力深化へ 覚書に署名=

ワールド

サウジアラムコ、第1四半期は減益 配当は310億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中