最新記事

北朝鮮

北朝鮮メディアの「沈黙」から読み取れる対米政策の変化

2018年4月11日(水)11時35分
ロバート・カーリン(スタンフォード大学国際安全保障協力センター客員研究員)

その記事も、金が韓国特使団を通じて、トランプとの首脳会談に前向きであることを伝えたと直接的に書いてはいない。しかし特使団が金の「意思」を理解していて、それを聞いたトランプが首脳会談への「意思を表明した」とは書いた。核実験やミサイル発射実験をやめてもいいとする、金の発言にも言及した。

唐突に、金が「大掛かりで毅然とした最終的な決意」を固めたとも書いている(こうした表現は大きな政策変更がある際に使われてきた)。そして「これまでの米政権の政策はことごとく失敗だった」というトランプの発言を踏まえ、金は「交渉の達人を自任する米大統領に前任者の失敗を避ける方法を示し、大統領に最終的な決断を求めるだろう」と予言した。

朝鮮新報は3月10日の「分析」に続き、14日にはコラムで米朝首脳会談の可能性に触れ、一番好ましいのは「ウィンウィンの戦略」だと述べた。アメリカ帝国主義打倒を掲げる北朝鮮としては実に異例な表現だ。

コラムは非核化の問題にも触れた。ストレートな言い方にならないよう注意しながら、米大統領が首脳会談で朝鮮半島の非核化問題「だけ」を取り上げるのは「極めて愚かなこと」だと指摘。深読みすれば、北朝鮮が北東アジアにおける同盟関係の大胆な再編を目指していることが分かる。何しろ、こう書いてある。世に「永遠の敵はなく、永遠の同盟もない」と。

(ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院・米韓研究所の「38 ノース」のブログから転載)


180417cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版4月10日発売号(2018年4月17日号)は「金正恩の頭の中」特集。「訪中できてラッキー」「統一はあくまで我々中心でやる」「この勝負、トランプの負けだ」......。米朝会談を控える北朝鮮の懸念と勝算を、さまざまな角度から分析。急速な融和ムードはすべて金正恩の計算通りなのか? この記事は特集より>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中