最新記事

DNA

未来の人類は遺伝子変異で酒が飲めなくなる?

2018年3月12日(月)17時00分
デーナ・ダビー

大量のアルコールを受け付けなくなる遺伝子変異体が注目されている Ilya Terentyev/ISTOCKPHOTO

<大量のアルコールを分解できない遺伝子変異体が出現。二日酔いもアルコール依存症も過去の話になるかも>

人類の進化の過程でアルコールを分解できなくする遺伝子変異体が出現し、いずれ人類は大量の酒を飲むことができなくなる――。そんな可能性を示唆する研究結果を、米ペンシルベニア大学のベンジャミン・ボイト准教授らがオンラインジャーナル「ネイチャーエコロジー&エボリューション」(2月19日付)に発表した。

ボイトらは、ヒトの遺伝的多様性に関する現時点で最も詳細なリストを作成する国際共同研究プロジェクト「1000ゲノムプロジェクト」のデータを入手。4大陸・26集団の2500人以上のゲノムを解析した。

私たちのDNAには1人1人の遺伝情報の暗号が書き込まれている。DNAの塩基配列によって遺伝情報がどのように発現するかがより詳細に決定する。

DNAの配列がわずかに変化し、行動や身体的特徴の違いとなって現れるのが遺伝子変異体だ。種の存続に役立つ変異体は次世代に受け継がれ、存続を妨げる場合はDNAから抹消されることが多い。

ボイトらは、最近出現し、かつ地理的に接触が多くなさそうな異なる集団間に存在する遺伝子に注目。世界各地で増えているように思える遺伝子変異体を5つ特定した。マラリア耐性や精巣(睾丸)の健康、心臓病予防といった特性に関連する変異体があるなかで、特に注目すべきはアルコール脱水素酵素(ADH)変異体だという。

アルコールを飲むと私たちの体は成分のエタノールを代謝・分解して、できる限り速やかに体外に排出する。飲み過ぎて代謝が追い付かないと血液中に過剰なアルコールが入り、吐き気などの不快な症状を引き起こす。

今回の研究によれば、正確なメカニズムは不明だが、ADH変異体の持ち主はアルコールをうまく分解できない。そのため、ごく少量の飲酒でもひどく具合が悪くなり、アルコール依存症になるほど大量に飲めない体質になる可能性が高いという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中