最新記事

アメリカ政治

銃規制のためには政治から立て直す、100万人集めた米高校生の驚くべき成熟度

2018年3月26日(月)20時00分
マーク・ジョセフ・スターン

同じくマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で事件に遭遇したキャメロン・キャスキーはこう言った。「私たちに黙って座っていろ、自分の順番が来るまで待っていろと言った指導者の皆さん、私たちを疑いの目で見たり、どうせ何もできないと冷めた目で見たみなさん、革命にようこそ。国民の意見を代弁できないなら出て行ってください」

生徒たちは民主主義を立て直さない限り、アメリカの銃危機を解決できないことを認識している。3月24日の集会で、彼らは投票権の重要性について語った。投票する権利が保障され、公平に代表が選ばれなければならないと訴えた。

マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生徒たちを別にすると、銃暴力の被害に遭った子供たちが地元議員と直接対決する機会はめったにない。なぜなら議員の側は、子供の言うことなど無視しても誰にもとがめられないと思っているからだ。

選挙区の形が政治の都合でゆがめられたり、民意が反映されないような形になっていることも珍しくない。銃ロビー団体の議会に対する巨大な影響力は民主主義をゆがめている。アメリカ人の中には選挙権が危険にさらされていることに無感覚だったり、自分の投じる票の力に懐疑的になっている人もいるかも知れない。だが生徒たちは、民主主義をあきらめてはいない。

悲観主義と偏見と無為はもうたくさん

銃乱射世代が引き継いだのは混沌としたアメリカだ。3月24日のデモが悲惨な銃乱射事件がきっかけで盛り上がったとしても、主催者たちは歩みを止める気はない。

ドナルド・トランプ大統領はどの州でも若者たちから嫌われているが、トランプがアメリカの目下の危機の原因であり症状でもあることを彼らは理解している。

この国を今よりもいい形で残すには、ティーンエージャーが投票でトランプを追い出し、銃乱射を終わらせるだけでは足りない。民主主義を立て直し、銃暴力の犠牲者の声が、人種や地域の壁を越えて届くようにしなければならない。

その点、明るい兆しは見えている。生徒たちには覚悟ができているからだ。マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生存者たちは、悲観主義と偏見と無為が何をもたらすかをその目で見ている。そんなものはもうたくさんだろう。

(翻訳:村井裕美)

© 2018, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英賃金上昇率、1─3月は前年比6.0% 予想上回る

ワールド

プーチン大統領、16-17日に訪中 習主席と会談へ

ワールド

英当局、国家安保法違反で3人逮捕 香港長官「でっち

ワールド

焦点:ロシア新国防相は「ソビエト的」、プーチン氏盟
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中