最新記事

世界経済

軍事衝突のリスク高まるが最大の懸念は環境問題 ダボス会議が報告書

2018年1月19日(金)18時18分

1月17日、世界の主要国の間で、軍事衝突も含めた政治・経済対立が起きるリスクが急速に高まっていると、世界経済フォーラム(ダボス会議)は「グローバルリスク報告書」で指摘した。写真は韓国と北朝鮮の軍事境界線に接する非武装地帯(DMZ)で2011年12月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

世界の主要国の間で、軍事衝突も含めた政治・経済対立が起きるリスクが急速に高まっていると、世界経済フォーラム(ダボス会議)はスイスで開催される年次総会を前に公表した「グローバルリスク報告書」で指摘した。

同報告書は、異常気象や気温などの環境の脅威から、経済格差やサイバー攻撃まで、2018年に想定される最大のリスクのいくつかに焦点を当てた。

特に注目されるのは、この1年でトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の言葉の応酬が激化したことで、急激に高まった地政学的な懸念だ。両者の間の緊張関係は、この数十年で核戦争の危機を最大に高めたといわれている。

トランプ大統領はダボス会議最終日の26日にスピーチを行う予定だ。同会議には、70カ国の首脳のほか、著名人や企業経営者、金融トップなどが出席する。

同報告書は、政府や企業、学界や非政府組織などの専門家計1000人近くを対象にした調査に基づいている。それによると、調査対象者の93%が、2018年には主要国間の政治・経済の対立が悪化すると予想。40%が、こうしたリスクは大きく上昇していると答えた。

約79%が、国家間の軍事衝突のリスクが高まっていると回答。報告書は、朝鮮半島の脅威のほか、中東での新たな軍事衝突の恐れを指摘している。

また報告書は、世界中で「カリスマ的強権政治」が台頭しているとした上で、ルールにのっとった多国間主義への支持が弱まったことで、政治や経済、環境面でのリスクが一層悪化していると指摘した。

誤った方向

報告書は、トランプ氏が決めた地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」と環太平洋連携協定(TPP)からの離脱や、2015年のイラン核合意を解消するとの脅しを取り上げている。

「われわれが格闘しているリスクには多元的な解決策が必要だが、いま違う方向に向かっている」と、報告書の作成に協力した保険大手マーシュ・アンド・マクレナン(MMC.N)傘下マーシュのジョン・ドルジック氏は述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏、ICCを支持 イスラエル首相らの逮捕状請求で

ワールド

中国外相、台湾新総統を批判 「国家と祖先を裏切る」

ビジネス

米カーライルの新たな日本投資特化ファンド、過去最大

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中