最新記事

中国

慰安婦カードを使わせる中国――習近平とサンフランシスコ市長の連携プレー

2017年11月30日(木)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

実は2015年9月に習近平が訪米した際、カリフォルニア州とネバダ州の「ロサンゼルス―ラスベガス」高速鉄道敷設に関して中国はカリフォルニア州と意向書を取り交わしている。ところがその後、あまり芳しくない進展しか見せておらず、1年後にはアメリカ側から白紙に戻すと宣言され、頓挫していた。習近平はメンツを失った格好だ。

清華大学顧問委員会のイーロン・マスク氏も絡めて

そこでスペースX社とテスラ・モーターズのCEOイーロン・マスク氏が、「ハイパーループ」という、超ハイテクを駆使した高速移動技術の導入を考案した。「ロサンゼルス―サンフランシスコ」間を30分で移動できるだけでなく、建設費は高速鉄道の10分の1で済む。

すると習近平は自分の母校である清華大学にある経営管理学院顧問委員会のメンバーに、早速イーロン・マスク氏を招聘し、委員の一人にした。この顧問委員会には数十名に及ぶ米大財閥の名前が並んでいる。そのリストは拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』のp.31からp.35に列挙してある。

「習近平―イーロン・マスク―李孟賢」という、一見何の関係もないようなキーパーソンが一本の線できれいにつながっていることが見えてくる。

これらの背景の下、貴州省を訪問した李孟賢は、「貴州省にもぜひ、サンフランシスコの高速鉄道建設に参画してほしい」と表明したのだ。

一方、慰安婦像の受け入れは、前述のとおり、基本的に9月には話が決まっていた。

なんと賢明ではないか。

2015年9月27日のコラム<米中首脳会談「西高東低」――米東海岸、習近平を冷遇>など、一連のコラムで述べたように、あのときの習近平訪米は失敗に終わったと言っていい。李孟賢の貴州訪問におけるオファーは、習近平がわざわざ選挙区に貴州を選んだほどに貴州省の経済活性化を望んでいたという現実と、2015年9月の訪米が失敗したという苦々しい現実の両方を救い上げる、実に一挙両得あるいは三得以上の効果があった。

こうして習近平とサンフランシスコ市長は結びつき、「慰安婦像」に関しても協力関係にあったわけだ。

韓国国会で「慰安婦の日」決議

連続撃ちをするように、24日、韓国の国会で、「8月14日を慰安婦の日とする」ということが決議された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中