最新記事

トランプファミリー

イヴァンカとパナマ逃亡者──トランプ一家の不動産ビジネスに潜む闇

2017年11月29日(水)12時15分


ぜいたく三昧

オーシャン・クラブ建設プロジェクトに対するドナルド・トランプ氏の関与は2005年、パナマのデベロッパー、ロジャー・カフィフ氏が米ニューヨークのトランプタワーを訪れ、同プロジェクトのアイデアを売り込んだのが始まりだった。

米実業界の大物だったトランプ氏に対し、必要なことは単に彼自身の名前の使用を許可し、ホテル管理を行うだけだと伝えた、とカフィフ氏は語る。このようなビジネス手法により、トランプ氏は出資や個人保証という重荷から解放された。

カフィフ氏は、ロイターとのインタビューで、トランプ氏がパナマでのプロジェクトを娘イバンカ氏のための「任務」として使いたがっていたと振り返る。当時、イバンカ氏は不動産ビジネスで経験を積むため、トランプ・オーガニゼーションに入ったばかりだった。

この計画は、カフィフ氏が社長を務め、同プロジェクトを手掛けるニューランド・インターナショナル・プロパティーズ・コーポレーションが、米投資銀行ベア・スターンズが引き受ける債券を通じて建設資金を調達するものだ。同行は2008年に破綻し、JPモルガンに買収された。JPモルガンはコメントを差し控えた。

債券を売るためには、デベロッパーであるニューランドは、マンションが売れることを証明する必要があった。ここでノゲイラ被告が登場する。ブラジル人の同被告は2000年代半ば、自動車販売の営業担当として働いていたスペインからパナマに到着した。

ノゲイラ被告がトランプ・オーシャン・クラブ建設プロジェクトに初めて関わったのは2006年、知り合いだったカフィフ氏がパナマでアレンジした初期販売のミーティングだった。同被告は、イバンカ氏や他の不動産ブローカーも同ミーティングに出席していたと語る。

そこでは、マンション1戸当たりの最低価格を12万ドルにすることが話し合われていた。その価格を聞いたノゲイラ被告は立ち上がり、その価格は普通の開発案件のものだと語ったという。「これはトランプ物件だ。名前に付加価値を付けなくてはいけない。22万ドルにするんだ」

「それで売れるの」とイバンカ氏が聞いてきた、とノゲイラ被告は語った。

ノゲイラ被告は1週間の猶予が欲しいと告げ、1週間以内に100戸超の手付金を集めてきた。その後、カフィフ氏は彼を主任ブローカーに据え、総売り上げの5%の手数料を約束したという。

このミーティングに関するノゲイラ被告の説明について聞かれると、カフィフ氏は「彼の言っていることの大半は正しい」と述べ、ノゲイラはイバンカ氏と「数回」会っていると記憶していると語った。

ノゲイラ被告によると、それから数カ月、パナマやマイアミ、ニューヨークで、イバンカ氏とプロモーションや販売について話し合った。同被告はまた、別のトランプ開発プロジェクトの候補地を視察するため、コロンビアのカルタヘナへ、イバンカ氏の一行とチャーター機で訪れたことも明かした。

ドナルド・トランプ氏はパナマ建設プロジェクトのオーナーではなかったものの、ノゲイラ被告によると、トランプ・オーガニゼーションは「家具や付属品選び」といった多くの細部に口を出していた。イバンカ氏が日々の任務を担当し、ノゲイラは「彼女とよく話した。何度もね」と当時を語る。彼はまた、トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニアや次男のエリック・トランプ氏とも会ったという。

イバンカ氏やトランプ氏の息子たちは、パナマのタワー完成イベントに出席したり、同プロジェクトのプロモーションビデオを制作したり、トランプ一家の関与を管理したりしていた。

ノゲイラ被告は、彼自身に委託されたビデオもあったと語る。ビデオのシークエンスのためにニューヨークのトランプタワーにアクセスできるようイバンカ氏が手はずを整えてくれたという。「われわれが制作したビデオの中で、私が話をして、彼女も語っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シンガポール航空機、乱気流で緊急着陸 乗客1人死亡

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中