最新記事

銃規制

米共和党、精神疾患のある元軍人にも銃購入解禁目指す

2017年3月16日(木)18時47分
ミシェル・ゴーマン

NRA主催の銃の展示会(2016年5月、ケンタッキー州ルイビル) John Sommers II-REUTERS

<33人の死者を出した銃乱射事件をきっかけに作られた規制が、全米ライフル業界(NRA)の圧力で白紙に?> 

米下院は今週、退役軍人省が裁判所の許可なしに、深刻な精神疾患のある元軍人を連邦政府の「全米犯歴照会システム(NICS)」に登録するのを禁止する法案を審議する見通しだ。

銃規制に反対する全米ライフル協会(NRA)が法案提出を後押しした。現行制度では、同省が「心神喪失」と判断した元軍人は登録され銃の所持や購入ができなくなる。NICSは銃を購入しようとする人の精神疾患などの情報が登録されたデータベースで、銃の販売業者は購入者がリストに掲載されていないか事前に確認することを義務付けられている。

2007年4月に情緒不安定な容疑者が33人の死者を出した米バージニア工科大学の銃乱射事件を受けて、当時の議会とジョージ・W・ブッシュ元大統領は、退役軍人省を含めたあらゆる連邦当局に対し、法律で銃の所持が禁じられた精神疾患者をNICSに登録するよう定める法律を制定した。

【参考記事】銃乱射に便乗するトランプはテロリストの思うつぼ

現行法をひっくり返す今回の法案を提出したのは、下院退役軍人問題委員会の委員長を務めるフィル・ロー下院議員(テネシー州選出、共和党)、早ければ木曜にも下院で審議入りする。

軍人からも反対が

退役軍人省は長年にわたって「恣意的に」一部の元軍人から武器所有の権利を取り上げてきた、とNRAは現行法を批判する。銃の購入を禁じるのは、精神疾患を持つ元軍人のなかでも自分や他人に危害を加えると認められた元軍人に限るべきだと主張している。

だが今回の法案には、当の軍人からも反対がある。米軍の退役将校14人は今週初め、上下両院の議長らに宛てた書簡で法案に反対するよう訴えた。元軍人は一般市民と比べて自殺のリスクが高いことが理由の1つだ。

【参考記事】帰還後に自殺する若き米兵の叫び
【参考記事】『アメリカン・スナイパー』射殺事件の真相は

米国防総省が昨年公表した2014年度の自殺発生報告書によると、1日に平均20人の元軍人が自殺し、3人に2人が銃を使用するという。書簡の差出人には、元CIA長官のデービッド・ペトレアスや、米沿岸警備隊元隊長のサド・アレン、元CIA長官のマイケル・ヘイデン、アフガニスタン駐留米軍元司令官のスタンリー・マクリスタルも名を連ねた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

任天堂、今期中にスイッチ後継機種を発表へ 営業益は

ビジネス

日本経済強くして円高方向へ是正へ、150円超の円安

ワールド

イラン、石油輸送でマレーシアの業者に依存=米政府高

ビジネス

米ボーイング新型宇宙船打ち上げ、10日以降に 技術
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中