最新記事

韓国経済

韓国「崔順実ゲート」の裏で静かに進む経済危機

2016年12月8日(木)11時00分
アンソニー・フェンゾム

Alan Baxter-Radius Images/GETTY IMAGES

<朴政権の「機能停止」で権力の空白が続くなか、財閥の苦境と外部環境の悪化で韓国経済は三重苦に>(写真:韓国では住宅ブームのあおりを受けて家計債務が1257兆ウォンまで膨らんでいる)

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人、崔順実(チェ・スンシル)の国政介入疑惑に端を発したスキャンダルは、朴自身が任期満了前の辞任を表明するなど政治危機に発展した。だが、その裏では経済危機も進行している。

 韓国経済を牛耳る巨大財閥には現在、強烈な向かい風が吹いている。サムスン電子や現代自動車の幹部は崔の財団への不透明な資金拠出に絡み、検察の事情聴取を受けた。国会も財閥トップを聴聞会に呼ぶ予定だ。

 ただでさえサムスンは、発火事故が続いたスマートフォン「ギャラクシーノート7」の生産中止で推定7兆ウォン(約6880億円)の損失を出した。ロッテグループは横領などの容疑で創業者や会長らが相次いで起訴されている。

 8月末には海運最大手の韓進海運が経営破綻。韓国政府は受注減にあえぐ造船業界支援のため、11兆ウォン(約1兆円)の公金投入を決めた。

【参考記事】不安定化する東南アジアと朝鮮半島、中国の朝貢体制が復活する?

 朴がどのタイミングで辞任するにせよ政権発足当初に掲げた「474政策(潜在成長率4%、雇用率70%、国民所得4万ドル)」の目標達成は厳しい情勢だ。輸出主導の経済発展モデルが限界を迎えたという見方も出ている。

「好況時は、経済政策の指令塔不在でも大きな問題にはならないが、政策の調整が必要な今は心配な要素だ」と、弘益大学の全聖寅(チョン・ソンイン)教授は言う。

 第3四半期のGDPは前年比2・7%増で、前期の3・3%増から減速。「ノート7」騒動と現代自動車のストが響き、製造業が振るわなかった。

 景況感は低迷が続いている。ANZリサーチはこう指摘した。「経済活動は当面、弱含みの状態が続く公算が高い。持続的な家計債務の増大が、ふらつく景気を下支えする金融政策の余地を狭めている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・サウジ、安全保障協定で近く合意か イスラエル関

ワールド

フィリピン船や乗組員に被害及ぼす行動は「無責任」、

ワールド

米大学の反戦デモ、強制排除続く UCLAで200人

ビジネス

仏ソジェン、第1四半期は減益も予想上回る 投資銀行
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中