最新記事

世界経済入門2019

仕事を奪うAIと、予想外の仕事を創り出すAI

HOW AI CREATES JOBS

2018年12月27日(木)17時00分
ケビン・メイニー(本誌テクノロジーコラムニスト)

コンサルティング会社のマッキンゼーは、8年以内に全トラックの3分の1が自動運転車になると予想している。つまり、ドナルド・トランプ米大統領の在任中に百数十万もの運転手がAIに仕事を奪われる可能性があるわけだ。15年後には「トラック運転手」という職業自体が過去の遺物となっていてもおかしくない。

著名なAI研究者でスタンフォード大学のスリア・ガングリは、順調にいけば5年以内に、AIが医療の画像診断や司法の判例調査という作業で人間をしのぐだろうと予想する。

ホーキンズも、いずれは「偉大な数学者」のようなマシンが登場すると予測している。「定理の証明や数学的構造の解明に挑み、麗しき高次元空間を頭の中で思い浮かべるのが数学者だが」と、彼は言う。「それは必ずしも『人間的』な仕事ではない。むしろ、そういう仕事のためのマシンを設計したほうがいい。そうすれば初めから数学的な世界に生き、数学的な行動を取り、人間の100万倍のスピードで働いても疲れを知らない究極の数学者を作り出すことができるだろう」

あなたが数学者やトラック運転手でなくても、機械的で単調な仕事に就いているならば、10年後には「過去の遺物」になりかけている可能性が高い。その手の雇用は徐々に失われ、いずれは博物館行きとなるだろう。真っ先に消滅しそうなのは、大学に行かなくても就けるような仕事。トラック運転手やウエーター、工場労働者やオフィスの事務員などだ。

その後は、いわゆる知識労働者にも危機が迫る。例えば簡単な会計業務はソフトウエアに取って代わられるだろう。単純で定型的な文書作成業務もそうだ。既にブルームバーグでは、決算報告書の作成をAIソフトに委ねているという。

医者も安泰ではない。未来の患者は、まずスマートフォンでAIドクターに相談する。症状を説明し、患部の写真でも送れば、AIが初期診断を下し、市販薬を飲むか専門医にかかるかの助言もしてくれるだろう。

言うまでもないが、初歩的なAIは何十年も前から存在している。グーグルの検索エンジンが極めて正確なのはAIをベースに構築されており、何十億件という検索結果から学習しているから。フェイスブックがあなたのニュースフィードに、あなたが好きそうなものを送ってくるのもAIを活用しているからだ。

しかしAIがトラックを運転したり、患者の診断を行ったりすることを可能にするには、まだ何かが足りない。例えば膨大な量のデータ(いわゆるビッグデータ)を瞬時に解析し、AIソフトに学習させる能力だ。

【参考記事】トランプ「給料を高く高く高く」政策の成績表 米経済の不安材料は?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化

ワールド

欧州委、中国EV3社に情報提供不十分と警告 反補助

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中