最新記事

メンタルヘルス

「自己肯定感低い人」がパートナーに求めがちなこと 超努力家のナルシストには気をつけろ

2022年1月7日(金)18時08分
シュテファニー・シュタール(心理学者、心理療法士 ) *東洋経済オンラインからの転載

このようにナルシストがパートナーの弱みを拡大して見てしまうことに対して、パートナー自身はどうすることもできません。にもかかわらず、依存的なパートナーは、自分がもっと優秀に、もっと美しくなりさえすれば、相手も自分に満足してくれるだろうと思ってしまうのです。

これは、自己肯定感が低い人が行う誤った推論の典型的な例ですが、こうした誤った推論は、ナルシシズムが強い人との関係だけに見られるものではありません。世の中には批判されると、どのような批判であっても(その批判が非常に不当で、本来は自分とは関係のないものであっても)すぐに落ち込んでしまう人がたくさんいます。それは、その人たちが過去の刷り込みから、心の底でいつも「私のせいだ」「私は十分ではない」と感じているからです。

依存関係に陥るカップルもいる

ナルシストの期待に応えようとするパートナーも同じです。もしかしたら、その人の理性的な部分では、ずっと前からすでに「私の彼(彼女)はナルシストであり、彼(彼女)が批判していることは私のせいではない」とわかっているかもしれませんが、無意識ではそのことに気づかず、劣等感を抱いているままなのです。

そのうえ、彼らの劣等感は、ナルシストの批判を受けて強まっています。そこで、その劣等感を払拭するために、「なんとしても彼(彼女)に認められ、気に入られるようにしなければ」と思い、一層努力します。けれども、ナルシストの態度は変わりません。もともと依存性のあるそのパートナーは、自分が他者に影響を及ぼせない無力な存在であることを実感し、ナルシストにもっと依存するようになっていきます。悪循環です......。

ナルシシズムの強い人がものすごい野心を抱いて権力志向になると、嫌われる同僚や上司になります。それは、ナルシストが非常に傷つきやすいからでもあります。ナルシストの心は非常に不安定で傷ついているのです。

しかし、ナルシストは、外見上はつねに自信満々で、繊細な人には見えないため、ささいなことでも傷つくことを周りの人からわかってもらえません。しかも、ナルシストは傷つけられて屈辱感を覚えると、悲しくなって引き下がるのではなく、ものすごく腹が立ってくるのです。怒りとねたみは、ナルシストに強く表れる感情です。

また、ナルシストはひどいうつ状態になることもあります。とくに成功するための戦略が失敗し、自分の負けを認めざるをえない状況になると、必ず「うつ状態」になります。そのような状況下では、ナルシストは自分が理想とかけ離れていると感じるため、絶望に陥ります。そこで、絶望感をなくすために再び成功できるよう努力するのですが、負担が大きくなりすぎて、精神的に行き詰まることがあるのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中