最新記事

消費

いま売り上げ好調なアパレルブランドは何が違うのか(栗野宏文)

2020年9月25日(金)11時35分
栗野宏文(ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブ・ディレクション担当)

コム デ ギャルソン・オム プリュス (左写真、2020/21コレクションより)、kolor(カラー、右写真)など一部の国産メンズ・ファッション・ブランドは売り上げ好調だ

<コロナ禍の今、生活者の価値観は変化し、ファッション業界も経験したことのない大きな課題に直面している。しかし洋服どころではない空気が醸成されても、ファッション業界に未来はあると、ユナイテッドアローズ創業者の一人、栗野宏文氏は言う。消費はどこに向かいつつあるのか? 答えは「社会潮流の中」にある>

20世紀的価値観が揺らぎ、「モノ離れ」が進み、「アパレル危機」の最中にあると言われるファッション業界は、新型コロナウイルスの影響でさらなる打撃を被っている。

「コロナ後」に訪れる新しい世界において、ファッション業界、そして消費はどのような方向に向かいつつあるのか?

あるいは、もっとシンプルに「次のトレンドは何か?」といった関心、さらには「そもそもトレンドとは何か? それは今でも意味あるものなのか?」という根源的な問い――。

日本を代表するセレクトショップ 、ユナイテッドアローズ (UA)創業者の一人であり、現在もUAのクリエイティブ・ディレクションを行う日本ファッション界の最重要人物、栗野宏文氏は、それらすべての「答えは社会潮流の中にある」と言う。
fashionbook20200910-cover.jpg
政治経済・音楽・映画・アートから国内外の情勢までを投影した時代の潮流を捉えるマーケターとしても活躍してきた栗野氏は、このたび『モード後の世界』(扶桑社)を上梓。同書で、ファッション近代史を通して日本のファッションの特異性と面白さを紐解きつつ、ファッション業界が向かうべき道を提示した栗野氏に、コロナ後のファッション業界と消費について寄稿してもらった。

(ニューズウィーク日本版ウェブ編集部)


◇ ◇ ◇

リアリティーの追求が僕のマーケティング

ユナイテッドアローズの栗野です。ファッション小売業でクリエイティブ・ディレクションを生業としています。クリエイティブ・ディレクションとは、春・夏や秋・冬というシーズン括りで、ファッションの視点で会社やブランドが進むべき方向の舵取りをする仕事です。

僕はファッションやマーケティングを専門に学習してはいません。全てを現場で学びつつ、本業に還元してきました。端的に言えば、僕の仮説や理論の構築は"実感"から得たものやさまざまな当事者とのコミュニケーションによって生成されています。

"リアリティー"の追求の結果が、僕のマーケティングであり、ディレクションです。ただし"実感"が"私感"で固まらないためにも"他者の息遣い"を嗅ぎ取ること、そこに寄り添う努力を続けてきました。それが僕のマーケティングであり、結果として捉えた"社会潮流"です。

よく「次は何が流行りますか?」ということを聞かれますが、流行は"つくるもの"ではなく、人々が今のリアルな生活のなかで何を求めているか、その"社会潮流"の結果です。この社会潮流分析が、僕がチームと共に構築してきた"ディレクション"の根幹を成しています。

そして、現在の(あるいは今後数年間の......)社会潮流を決定する因子は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であることは間違いないでしょう。

では、このCOVID-19禍のもとで、ファッション業界、そして消費はどのような方向に向かいつつあるのか? それを直近の具体例を見ながら分析したいと思います。

【関連記事】ファスト・ファッションの終焉? ヨーロッパの真の変化への積極的な取り組み

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、20万8000件と横ばい 4月

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中