最新記事

YouTube

過熱する韓国キッズ・ユーチューバー ベンツ運転からタコのつかみ食いまで

2019年8月21日(水)19時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

さらに、お金以外にも肖像権の問題がある。ドイツでは2013年、産婦人科にカメラを設置し妊婦たちを追ったリアリティーショー形式のドキュメンタリーの撮影が行われた。しかし、ドイツでは法律上、赤ちゃんでさえ生まれた瞬間から個人の権利が認められるため、たとえ両親が撮影許可したとしても放送はできないということで、ベルリン州政府は児童の権利保護のためこの番組の制作を禁止し、番組はお蔵入りとなった。

ドイツ人と結婚し、現在ドイツ在住の筆者の友人も自分が生んだ赤ちゃんの写真をSNSに載せていない。日本では子供の権利は親が管理するという考え方をする人が多いが、ドイツでは生まれた時から個人の権利があるという考え方が根付いているようだ。

キッズユーチューバーの収入が激減する?

こうしたなかで、YouTubeは米連邦取引委員会から「児童オンラインプライバシー保護法」違反に関して調査を受けている。これに関連してYouTube側は、子供の安全に関するポリシー違反として今年に入って3カ月間だけで80万本以上のビデオを削除していることを明かした。またこの結果をもとに、今年6月3日「幼い未成年者(13歳以下)が大人の同伴なしでライブ配信を行うことはできない」という条項を含む、「未成年者や家族を保護するための取り組み」規制を発表。さらにブルームバーグの報道によれば、YouTube側は子供たちが見る可能性の高い動画に、その内容に合わせたターゲット広告を表示させないことも検討中だという。これが実現すると、子供YouTubeチャンネルの広告収入が激減するのではないかとも言われている。

一部の行き過ぎたユーザーのために規制をかけすぎることで、自由で活気があるプラットフォームとして成長したYouTubeの魅力がどんどん失われていくかもしれない。しかし、お金や注目欲しさに暴走しはじめたのなら、ある程度ブレーキとなる規則を作らなくてはいけないだろう。

動画が誰でもスマートフォン1つで簡単に撮影できてYouTubeやインスタグラム経由で世界に投稿できる現代は、「1人1メディア時代」ともいわれている。少年少女たちは、発信することによって何かをそこへ求めているようにも見える。SNSで人気者となったスターたちの素顔を追ったネットフリックスのリアリティー番組『密着!キャメロン・ダラス』の中で、15歳のマーク・トーマス君は「SNSスターになる子供たちは、家庭環境に問題がある子が多い」と語っている。マーク君本人も父親に3年間も会っていない。インタビュアーに対して「不幸に見えても、バネにして成功する人は多い」としっかりした口調で話している。また、日本の10歳の不登校児「ゆたぼん」は学校に行かないことは悪いことではないという持論をYouTube上で発信した。これはネット上で大炎上してしまったが、少なくともゆたぼんは生きづらさを抱えたまま学校に行かずに引きこもるのではなく、ネット上に自分の居場所を見つけたように思えた。

未成年だからといって、キッズユーチューバーの誰もが親に操られて出演しているという訳ではないだろう。家族の輪から外れ、自分らしく発言できる居場所がSNS上に見つかった子供たちもたくさんいる。しかし、彼らが安心して安全にネット上に情報発信できるようにするためには、YouTubeという道路を整備し、アメリカやドイツの法律のような暴走を規制するルールが必要になってくるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英GSK、1─3月利益と売上高が予想超え 通期利益

ビジネス

JPモルガン、ロシアで保有の資産差し押さえも

ビジネス

ユナイテッドヘルス、サイバー攻撃で米国人情報の3分

ワールド

原油先物4日ぶり反発、米の戦略備蓄補充観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中