最新記事

母親代行テクノロジーに家事はお任せ!

成長する家事代行サービス市場。便利さを知ってしまった人々は究極の「ロボットママ」を求めるのか

2015年1月4日(日)10時00分
ケビン・メイニー

スーパーママ 1台の家政婦ロボットにすべてお任せではなく、ネットやソーシャルメディアを活用した仕組みがバーチャルなロボットママを生み出す

 50年前に約束されていたゆとりある未来を手にして、誰もが今より幸せになれる。それが「ママ代行エコシステム」だ。

 あと10年もすれば、仕事以外はすべて余暇の時間になるかもしれない。各種の代行サービスが発達して、家事をすべて自分でこなす必要はなくなり(母親にしてもらう必要もなくなり)、気軽に外注できるようになるだろう。

 さまざまな家事とそれを引き受ける人をマッチングさせる家事代行サービスの「タスクラビット」。オンデマンドで洗濯を依頼できる「ワシオ」。スーツケースの荷造りから旅先への配送、回収、服の洗濯、保管までお任せの「ダフル」。こうした代行サービスのスタートアップ企業は、ベンチャー投資から巨額の資金を調達している。

 今年5月、あるエンジニアが投稿したツイートが話題になった。「OH(聞いた話、の意味):サンフランシスコのテクノロジー文化が取り組む問題はただ1つ。母さんがボクのためにやってくれなくなったことは、どうすればいいの?」

 多くの人が、この言葉をテクノロジー文化への批判と受け止めた。世の中には地球温暖化や貧困、肥満など重要な問題があるというのに、20代の起業家はその並外れた才能を費やして、カネを持て余している生意気な20代のために「母親の代わり」を開発しているのか──。

ウィン・ウィンの方程式

 しかし、彼らの取り組みを、省力化という長期的な視点で捉えることもできる。50年代と60年代は、電化と機械化が戦後の好景気と重なり、人々は日常の単純な仕事から解放されるという新しい未来を描き始めた。洗濯機や食器洗浄機、掃除機、電動工具、電子レンジなどが普及。たらいで洗濯物をすすぐなど、ずっと人の手でこなしてきた家事や作業が突然、平均的な日常生活から姿を消した。

 人々は胸を躍らせた。これほど多くのことがこれほど急速に機械化されれば、もう後戻りはしないはずだ。30世紀を舞台にしたアニメ『宇宙家族ジェットソンズ』の家政婦ロボット「ロージー」も、近いうちに実現しそうに思えた。

 しかし、テクノロジーは行き詰まった。この半世紀、機械化は日常の雑用をどれだけ楽にしてくれただろうか。ロボット掃除機のルンバやネコ用全自動トイレは身近な製品になったが、GPSで動く全自動芝刈りロボットはまだ大量生産に至っていない(現代の技術があれば簡単そうな気もするが)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-米台の海軍、4月に非公表で合同

ビジネス

米4月PPI、前月比0.5%上昇と予想以上に加速 

ビジネス

中国テンセント、第1四半期は予想上回る6%増収 広

ワールド

ロシア大統領府人事、プーチン氏側近パトルシェフ氏を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中