最新記事

働き方

話題のあのバナナジュース専門店は、ファイナンシャルプランナーの副業だった

2021年10月4日(月)15時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

通常、FC加盟時には加盟料が必要ですが、前田さんは立ち上げ当初の飲食店の現状を踏まえて、加盟料を一切取らずにノウハウを提供しました。容器の仕入れやメニュー開発などのノウハウの構築には、時間がかかります。そのため、収益化を急ぐ飲食店側にとっては、この時点でも加盟のメリットがあります。

さらに、SNSや雑誌などに登場し空中戦を仕掛けることで、一つの飲食店では困難だった複数のメディアへの露出も獲得をしていきます。

では、どうやって前田さんは収益化をしているのか。答えは、バナナジュースの容器にあります。容器にロイヤリティーを入れて販売するのです。

売り上げに比例して容器が注文されていくので、飲食店に大きな初期投資は必要ありません。前田さんも、売り上げに比例した容器の受発注を行うため、在庫を常時抱える必要はありません。バナナの仕入れ自体は、仕入れルートや管理ノウハウを持つ飲食店が行います。

前田さんの本職がお金のプロであるからこそ、幅広い収益構造の選択肢の中から、一見リスクが高く見える分野でも、顧客も含めてリスクを下げる方法を構築することが可能になったのです。そして、強烈なスピードでサービスを構築していきました。

ビジネス開始からわずか1年2か月で100店舗に到達する見込みとなっており、これは「いきなり!ステーキ」の100店舗到達の日本記録である2年8か月を上回るペースとなっています。

結果として、前田さんの元には、このまがりDEバナナ事業の提携の提案が寄せられました。最終的には87.7千万円(バナナ)での大型提携に成功するという、最後の最後まで「そんなバナナ」と感じさせられる事例となりました。

本業とはまったく違う分野で、前田さんは、なぜこんなミラクルを実現できたのか。その要因を考えてみましょう。

まずは、本業と同じ金融の分野での副業を探して収益化を目指すのではなく、金融に限らない、いろいろな業界に対しての「既知」のカードを多数保有していたこと。

さらに、そのカードを引き出し、掛け合わせる力があったこと。最終的にはいままで本業で培ってきたお金の知識をさらに掛け合わせることによって、汎用性と実現性を高めました。

そして何よりも、新型コロナウイルスで激変する飲食店が置かれる環境変化を、まるで自分の体に起きた異変であるかのように当事者意識を持ち、潜在ニーズを探し、仮説検証を進めていったこと。このサイクルを愚直に素早く回す行動力こそが、成功の要因だったのではないでしょうか。

普通の会社員のための超副業力
 森 新 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国自動車輸出、4月は過去最高 国内販売は減少に減

ワールド

UNRWA本部、イスラエル住民の放火で閉鎖 事務局

ワールド

Xは豪州の法律無視できず、刃物事件動画訴訟で規制当

ビジネス

ドイツ住宅建設業者、半数が受注不足 値下げの動きも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 4

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 7

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中