最新記事

「責任者を出せ!」コールセンター・スタッフに詰め寄るクレーマーに上司が放った爽快なひと言とは

2022年5月16日(月)11時30分
吉川 徹(元コールセンター従業員) *PRESIDENT Onlineからの転載

*写真はイメージです  deeepblue - iStockphoto


携帯電話会社のコールセンターは毎日さまざまな客とのやりとりが求められる。オペレーターとしての勤務経験がある吉川徹さんは「言いがかりをつけて、金品をせしめようとする客もいた」という。そんなときはどう対応したのか。実録ルポ『コールセンターもしもし日記』(三五館シンシャ)より紹介しよう――。


「自衛隊員の妻を名乗る女」クレーム内容が筋違いすぎる

「携帯電話が使えないんですけど! どうなってるんですか!」

自衛隊員の妻だと名乗った女性は怒り狂っている。

「先月の料金のお支払いの確認が取れていないために、利用ができなくなっています」
「いつからですか! 住所見てわかりませんか! 自衛隊の官舎に住んでる人の電話をなぜとめるんですか! 日本のために海外派遣されてるんですよ! その夫が今、私に電話してたらどうするんですか! あなた、それでも日本人ですか!」

知りませんよ、そんなこと。携帯電話と自衛隊がどう関係あるんですか。金を払わないあんたが悪いんでしょう。使った分は払うのが社会のルールじゃないですか。

そう言いたい気持ちを抑え、ヒステリーに怒り狂う声を聞きながら再開の手続きを進めた。支払いの延期が初めてということもあるが、早く電話を切りたかったというのが本音だ。

「今、再開の手続きに入っておりますが、このようなことは今回限りとなりますので――」

電波が通じた(※1)のを携帯電話の画面で確認したのだろう。説明の途中で電話は切れた。

※1:画面にアンテナのマークが表示されていれば電波が通じている。このように電波が通じたのをその場で確認してから切るような人は少ない。逆に、通話中、興奮のあまり通話終了ボタンを押して切ってしまう人はたくさんいた。

マニュアルは役に立たないものばかり

コールセンターに勤務するようになってから、クレーム処理の本を何冊か開いてみた。頭ごなしに怒鳴りつけてくるお客への対処方法が書かれているのではないかと思ったからだ。

そこにあったのは「相手の話を真摯(しんし)に聞く」だとか「カッとなったら6秒数える」といった、実践では役立ちそうにない方法ばかり(※2)だった。

このコールセンターで真摯に話を聞いていたら耳を痛めてしまうし、怒られっぱなしの中では何十秒数えても事態が好転することはない。かといって参考になる部分がないわけでもなかった。

※2:ある本には、クレーム電話を終了させる方法として「丁寧に断って電話を切る」とあった。これではなんの解決にもならない。別の本の「数分我慢すれば、ほぼ解決」というのも意味がない。「クレーマーを宇宙人だと思え」というのは心構えという点では役に立った。

「もっとも手強いクレーマーは常識を持ち合わせていない人」という箇所だ。これには頷けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中