最新記事

投資

新興国株式は買いか? アナリストが2021年の世界経済を楽観する理由

PROMISING MARKETS

2021年1月20日(水)06時45分
ダニエル・グロス(ビジネスライター)

インドも高成長が見込まれている(ムンバイ、2017年) DHIRAJ SINGH-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<予測では先進国より力強い成長。新興国株の上昇を牽引する要因は、貿易の回復、低金利と低インフレ、そして......>

(※本誌「2021年に始める 投資超入門」特集より)

2020年は、コロナ禍が世界経済に大打撃を与えた。新興国も例外ではない。特にヨーロッパやアメリカ、そしてアジアへの輸出に依存する国々が受けたダメージは大きかった。新興国26カ国の株価をカバーするMSCI新興市場指数は、2020年1~3月期に約35%も下落した。
20210112issue_cover200.jpg
だが2021年は違うと、アナリストらはみる。新型コロナウイルスのワクチンが出回り、旅行や貿易、消費が回復すれば、原油など原材料の需要も戻ってくるだろう。既に2020年後半にマイナスのほとんどを取り戻した新興国は、一段と成長に拍車が掛かりそうだ。

新興国株の上昇を牽引しそうな要因はいくつかある。

何より大きいのは世界経済の復調だ。そうなれば新興国の輸出品需要も拡大し、コモディティー価格も上昇するだろう。米金融大手モルガン・スタンレーは、世界経済は2020年こそマイナス成長だったが、2021年は健全な6.4%の成長になると予測する。輸出主導経済の国にはいい知らせだ。

「2021年4~6月期に世界経済の復調が本格化すれば、新興国の成長が世界をリードするだろう」と、ゴールドマン・サックスは予測している。

資産運用会社ブラックロックは、新興国株は「(世界経済の)回復の最大の恩恵を受ける」としている。例えば経済活動と旅行需要が回復すれば、メキシコやロシアなどの産油国がほかよりも大きな恩恵を受けるだろう。

インドやブラジル、中国など大型の新興国では、活発な内需も急速な成長を後押ししそうだ。モルガン・スタンレーの予測では、2021年の成長は先進国が5.1%であるのに対し、新興国は7.4%になるとみられる。なかでもインドは9.8%、中国は9%と、力強い成長が期待される。

いち早くロックダウン(都市封鎖)から抜け出した中国は、新興国の成長をリードしそうだ。だがその好調を牽引するのは、基本物資への旺盛な需要だけではない。中国とインドは世界のデジタル革命のリーダーでもあり、コンタクトレス決済やネット通販、人工知能(AI)といった技術を急速に取り入れている。

バイデン政権もプラスに

マクロ経済には、新興国に好ましい条件がそろっている。現在は世界的な低インフレと低金利の時代だ。それが資金調達コストを下げ、成長に拍車を掛け、ハイリターンの投資先(新興国に多い)への資金流入をもたらしている。

ドルの軟化も新興国にはプラスに働く。「歴史的にドル安は新興国にとっていいことだ」と、BNPパリバの新興国調査部門を率いるマルセロ・カリバリョは言う。

transaction_accounts_superbanner.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中