最新記事

中国経済

中国「半導体銘柄」にバブル到来か 対米摩擦で政府が国産支援

2020年6月29日(月)12時24分

この結果、中国半導体企業株のバリュエーションは急騰した。大半は世界的な知名度の乏しい企業だ。

光学用半導体のスタートアップ企業、ノース・オーシャン・フォトニクスは、2017年にエンジェル投資家から資金調達した際、企業価値評価は数千万元だった。それが今年3月の直近の資金調達を終えた際には10億元を超えたのだ。

「突如としてこのセクターに資金が押し寄せている」とベンチャー投資家は言う。

上場企業の株価も急騰した。多くは中国版ナスダックと呼ばれる、上海証券取引所の「科創板(スター・マーケット)」で取引されている株だ。

半導体製造装置のアドバンスト・マイクロ・ファブリケーション・エクイップメント(AMFC)の株価は1月から150%も上昇し、PERはなんと540倍に達した。

国内企業で代替

業界関係者の間で、中国の半導体企業は2つのグループに分類されている。

1つ目は中国ハイテク企業が輸入している半導体や半導体製造装置の部品や機器を代替できそうな企業グループ。2つ目は人工知能(AI)関連企業だ。しかし、いずれのグループも数々のリスクを抱える。

グローリー・ベンチャーズのジェリー・バイ氏は「海外製よりも安い半導体にばかり投資するなら、だれもがそうすることは可能だが、そうするとだれも利ざやは稼げない」とくぎを刺す。

多くの企業は実績も欠いている。年内に科創板への上場を計画するAI用半導体企業、カンブリコンの目論見書によると、2019年決算は売上高が4億4400万元なのに対し、純損益は11億8000万元の赤字だ。同社はファーウェイがらみで事業を失い、今は売上高の約半分を1つの地方政府支所に依存する。

半導体投資の経験者は「彼らにこれといった実体的な顧客は存在せず、大きな赤字を出している。それでも政府がAIと半導体を支援したがっているために、彼らは上場審査を通ることできる」と語った。

カンブリコンにコメントを要請したが、返信は得られていない。


Josh Horwitz Samuel Shen

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染60人を確認 6月の感染者合計886人に
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・今年は海やプールで泳いでもいいのか?──検証
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.


20200630issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ

ビジネス

丸紅、発行済み株式の2.3%・500億円上限に自社

ワールド

韓国当局、企業価値向上プログラムで指針案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中