最新記事

投資信託

投信からの資金流出が続いた2019年の投資動向

2020年1月17日(金)13時30分
前山 裕亮(ニッセイ基礎研究所)

外国株式については、11月の1,800億円の資金流出から12月は450億円の資金流出に大幅に鈍化した。鈍化の主な要因は大規模な新規設定ファンドであり、新規設定ファンドを除くと11月と同様に売却が膨らんでいた。実際に12月は、新設された外国株式ファンド(うち2本は【図表2】赤太線)に1,900億円に迫る資金流入があった(ちなみに11月は新設ファンドに400億円の資金流入があった)。それらを除いた既存の外国株式ファンドに限ると12月は2,300億円の資金流出があり、11月の2,200億円からやや拡大した。やはり、12月は外国株式も国内株式と同様に11月以上に利益確定に伴う売却も多かったようだ。個別でみると、2019年前半に人気を集めたバイオ・ヘルスケア株ファンドからの資金流出が11月の500億円から12月は800億円と加速している。それに加えて、ロボット、AIといったテクノロジー系のテーマ株ファンドからも引き続き大規模な資金流出があった。

Nissei200116_2.jpg

2019年は内外株式と外国債券から資金流出

2019年を振り返ると、1年通して足元の12月と同様の傾向があった【図表3】。2019年は、多くの地域で株価上昇が続いたため、内外株式は12月に限らず利益確定に伴う売却が膨らんだ。外国株式は一部のファンド(【図表4】赤太字)が人気を集めたこともあり、1年間で2,000億円程度の資金流出と小規模な流出であったが、国内株式は資金流出が1年で1.4兆円に迫った。足元12月末時点で国内株式全体の純資産総額が10.3兆円であるので、実に1割以上がこの1年で流出した。国内株式の資金流出が大きかったため、ファンド全体でみても2019年は1年で5,000億円の純流出となった。

Nissei200116_3.jpg

Nissei200116_4.jpg

また、2019年は外国債券からの資金流出も大きかった。外国債券ではすべての月で資金流出となり、流出金額は累計で9,000億円に迫った。外国債券からの資金流出の大部分は、外国債券の約7割を占める毎月分配型ファンド(足元12月末時点で外国債券の純資産総額12.7兆円のうち毎月分配型が8.6兆円)からであった。毎月分配型の外国債券ファンドからは2019年に1.1兆円の資金流出があり、1.6兆円の資金流出があった2018年と比べると鈍化したが、2019年も資金流出が止まらなかった。

その一方でバランス型には1年間で1.5兆円の資金流入があった。「東京海上・円資産バランスファンド」のような伝統的なものだけでなく、「グローバル3倍3分法ファンド」に代表されるレバレッジを活用したものも人気を集めた。さらに、DC専用のバランス型ファンドへ1年間で3,000億円を超える資金流入があり、確定拠出年金からの資金も下支えしていた。バランス型に加えて、流入規模こそ小さかったが国内REIT、外国REIT、国内債券にも12月と同様に1年通してみて流入超過であった。2019年に最も資金流入が大きかったのが「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド」であったことからも分かるように、2019年は投資家のインカム選好が顕著であった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中