米通商代表ライトハイザーの交渉にほころび? 合意成果に与党から批判も
ライトハイザー氏は1980年代にレーガン政権でUSTR次席代表を務め、その後民間で通商問題専門弁護士として自らの考えを先鋭化させた。顧客の中には米国の鉄鋼メーカーがあり、彼らは多額の国家補助金を得る中国勢から輸入される製品と苦しい競争を強いられていた。
あるベテランの米通商担当者はライトハイザー氏について、トランプ氏のことを大概の人よりもよく理解し、貿易のやり方を一変させたいと考えていると説明。世界貿易機関(WTO)の解体や、多国間貿易協定から二国間協定への移行、米産業に打撃を与えている国に対する鉄鋼・アルミニウムの懲罰的関税発動――といった政策を受け入れていると付け加えた。
もっともライトハイザー氏の交渉スタイルは、トランプ政権の他の要人と同じく大きな批判を集めている。複数の議会関係者は、トランプ氏の通商担当チームが交渉事で書面のやり取りを拒むケースがままある上に、ライトハイザー氏が歴代の代表と異なり、担当者が記者に背景説明をするのを禁じていると述べた。
そうした態度は誤解や混乱をもたらしかねない。
例えばライトハイザー氏は、米中が完全に第1段階の合意を取りまとめたと主張するが、中国政府は米国側が発表した詳しい内容を正式に認めておらず、市場や関係業界は戸惑いを隠せない。
86ページに及ぶ合意文書が中国語に翻訳され、さらに詳細なものが公表されるにはまだ数カ月かかる可能性がある。
メキシコの駐中国大使を務めたホルヘ・グアハルド氏は、USMCA修正交渉を巡りメキシコによる労働基準順守を監視する米計画について、メキシコとの間で生じた騒動と、中国による第1段階の合意文書公表が遅れている問題は、ともにライトハイザー氏のやり方への疑念を高めているとの見方を示した。
元USTR高官のハリー・ブロードマン氏は、USMCA修正交渉中にメキシコの件がもれて公にされねばならなかった理由は理解できないし、中国が文書を公表する前に合意に達したと米側が宣言したのも異例だったと話した。
これについてライトハイザー氏は17日、フォックス・ビジネス・ニュースで、メキシコを巡る状況は「交渉最終盤の思わぬ障害」で「簡単に対応できる誤解」だと弁解した。