最新記事

事件

ファーウェイと対イラン制裁を結んだ点と線 米当局「潜航捜査」の舞台裏

2019年3月12日(火)18時00分

空港で入手した証拠

孟氏は今月1日、逮捕前に取り調べを受けたのは権利の侵害に当たるとしてカナダ政府などを提訴。訴えによると、彼女は2018年12月1日、バンクーバーの空港で飛行機を降りたところを呼び止められた。国境警備の当局者がパスポートを確認した上で、孟氏を別室に移動させた。

そこで、携帯電話2台とタブレット端末「iPad(アイパッド)」、私用のコンピューターを提出。パスワードも教えるよう求められ、担当官が機器の中身を確認したという。

ロイターは、当局が孟氏の端末機器からどのような情報を得たか把握できていない。ただ、孟氏や他の中国の通信機器メーカー幹部が所持品を国境警備当局に提出したのは、これが初めてではなかった。

米当局はファーウェイ訴追の数年前から、国内の空港を通過する通信機器メーカー幹部から捜査に資する情報を差し押さえていたと、ファーウェイとZTEへの捜査や、孟氏の訴追に詳しい複数の関係者は明かす。

例えば2014年、孟氏がニューヨークのケネディ国際空港から米国に入国しようとしたときのこと。米側の訴追内容によると、当局は孟氏が所有していた端末の1つに、ファーウェイとスカイコムの関係について、「通常のビジネス協力である」などとする応答要領が残されているのを発見した。

この時も孟氏は別室で追加検査を受け、電子機器を提出させられたと、事情に詳しい関係者は語る。端末は数時間後に返却され、孟氏は解放されたという。

また、同年9月12日、米当局は入国しようとしたZTEの当時のCFOを検査。米国が長年疑念を抱いてきた制裁対象の国々とファーウェイの取引を裏付ける情報が発見されたと、関係者は言う。

このCFOは、アシスタントとともにロンドンからボストンのローガン空港に到着した際に足止めされたという。

アシスタントが運んでいたレノボのノートパソコンには、4人の経営陣がサインした2011年8月25日付の機密文書が保存されていた。制裁対象国でプロジェクトを行うのに必要な製品を、米国で調達するフロント企業設立の必要性を確認する内容だった。

米当局者によると、このときの取り調べがZTEを追及する重要な証拠になったという。

問題の書類には、「F7」という企業が、制裁対象国での契約獲得のため、フロント企業を活用している実態も記されていた。F7とはファーウェイを指すと、ZTEやファーウェイの捜査に詳しい関係者は話す。

この書類は2016年3月、ZTEが米国内のサプライヤーとの取引を禁じられた際に、米商務省がホームページに掲載したものだ。米紙ニューヨークタイムズはその直後、ZTEによるF7の説明はファーウェイに合致すると報じた。

ロイターが閲覧した裁判書類やファーウェイの捜査に詳しい関係者によると、その1カ月後、商務省はファーウェイの米国法人に対し、米国技術のイラン輸出に関する情報の提出を求める召喚状を出した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時間後

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中