最新記事

自動車

13年ぶり凱旋、トヨタのでかいピックアップ車は売れるのか?

2017年9月25日(月)18時20分
冨岡 耕(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

トヨタ自動車が9月12日に発売した、5人乗りの車室の後ろに大きな荷台がついているピックアップトラック「ハイラックス」。コアなファンを再び獲得できるか(記者撮影)

「超ド級」「デカッ」「ハンパない」――。トヨタ自動車が9月12日に発売した新型車のパンフレットには、こんな文字が躍っている。

この新型車とは、ピックアップトラックの「ハイラックス」だ。2004年に国内から姿を消して以来、ファンから復活を望む声が強く寄せられており、13年ぶりに"復活"した。全国のトヨタ店で販売される。

とにかく「でかさ」に驚く

「普段使いで選択する人はいないだろう。普通にでかい車だ」と、トヨタ・CV(商用車)カンパニーの前田昌彦チーフエンジニアが表現するように、ハイラックスは国内で販売するトヨタ車の中では最も大きい車種の一つだ。サイズはボディ全長が5.3メートル超、幅も1.8メートルを超える。

2004年まで日本で販売していた6代目は全長が約4.7メートル、幅が約1.7メートルだったが、世界の標準車となるべく巨大化してお膝元に帰ってきた。排気量2.4リットルのディーゼルエンジンを搭載し、走行シーンに応じて2駆と4駆を切り替えられる。価格は326万7000円~374万2200円。販売目標は年2000台だ。

ハイラックスは1968年の発売以来、約180の国と地域で販売されている。現行モデルは2015年にフルモデルチェンジした8代目で、初代から数えて半世紀の歴史を持つトヨタを代表する車だ。世界での累計販売台数は、約1730万台に及ぶ。

toyokeizai170925-2.jpg

大きな荷台に荷物をたくさん積むアウトドアでの利用シーンなどで、若い世代にも訴求する(写真:トヨタ自動車)

toyokeizai170925-3.jpg

荷台がとにかく大きい(写真:トヨタ自動車)

タイからの逆輸入車であるハイラックスは、「IMV」とよばれる新興国戦略車の役割を持っている。悪路でも走行できるタフさや力強さに加え、後方にある大きな荷台に荷物を乗せやすいことが特徴だ。

前田チーフエンジニアは、「気温50度を超える中近東やマイナス50度のロシア、標高4800メートルで空気が薄い南米ペルーなど世界各地で車を持ち込み開発してきた。過酷なラリーでもチーム優勝を達成するなど、そのタフさは生かされている」と語り、世界のどんな環境下でも壊れず、高い評価を得てきた自信を示した。 

ただ、世界の中でも道路環境がいい日本でどこまで需要があるのかという疑問が出てくる。さらに、「ハイラックスは1ナンバークラスになるため、車検も毎年必要になるほか、デッキの荷物は雨が降れば濡れる」と、前田チーフエンジニアは自虐的に語る。

それでも日本には現在約9000人のハイラックス保有者がおり、都道府県別では北海道が最も多いという。林業などの仕事で使っている人が大半だとみられる。まずはこうしたユーザーの買い換えを促す。

toyokeizai170925-4.jpg

アウトドアでの活躍を想定している(写真:トヨタ自動車)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

パレスチナ自治政府のアッバス議長、アラブ諸国に支援

ワールド

中国、地方政府に「妥当な」価格での住宅購入を認める

ビジネス

お知らせー記事を削除しました

ワールド

EU、中国製ブリキ鋼板の反ダンピング調査開始
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中