最新記事

アップル

ジョブズ型経営を捨てろ

天才的な創業者が築いた巨大なハイテク企業が成功し続けるには、大胆な戦略転換が必要だ

2014年11月18日(火)15時33分
ケビン・メイニー

忠誠心があだに プレゼンまでジョブズそっくりにやるクックの下では成長は望み薄? Justin Sullivan/Getty Images

 ファン待望のiPhone6が発売され、アップルウオッチ、アップル・ペイの発表が話題を呼んで、アップルは目下快進撃中だ。CEOのティム・クックはスティーブ・ジョブズの遺志と会社を忠実に守っているようにみえる。

 だが、その忠誠心が命取りになりかねない。アップルを次のステージに飛躍させるには、クックはジョブズの教えを捨てる必要がある。

 テクノロジー業界を支配する巨大企業が伝説的な創業者から腹心の部下に継承された例は過去に4つある。IBM、マイクロソフト、インテル、アップルだった。

 そのうちの2社、マイクロソフトとインテルの継承は明らかに失敗例だった。一方、56年に初代社長のトーマス・ワトソンSr.がその息子のトーマス・ワトソンJr.にバトンを渡したIBMは、想像を絶するような大躍進を遂げた。

 クックCEOの下で開発された製品が市場に出始めた今、アップルの代替わりは失敗例の2社と似ているようにみえる。だとすれば、アップルは早晩、革新的なアイデアを出せなくなり、面白みを欠いた手堅い製品を作る古株企業になるだろう。そう、今のインテルやマイクロソフトのような会社だ。

 マイクロソフトとインテルは最盛期には、ソフトウエアの王者とハードウエアの覇者として業界に君臨していた。この2社を創設したのは歴史に名を残す天才経営者、ビル・ゲイツとアンドルー・グローブだ。

 グローブはインテルに長年勤務してきた友人のクレイグ・バレットを後任に据えて、98年に退職した。当時のインテルは加速する機関車だった。バレットはグローブの敷いた路線から外れないように機関車を走らせるのが自分の務めだと考えた。

 だが時代はインターネットへ、そしてモバイルへと、めざましい変化を遂げつつあった。ずっと同じ軌道を走り続けたインテルは新時代のリーダーになるチャンスを逃してしまった。

 98〜00年、つまりバレット就任後の2年間、インテルの株価は上昇を続けた。だが、この2年間はITバブルでハイテク株がほぼ軒並み上昇した時期だ。00年に入った直後、インテルの株価は急落。二度と回復はしなかった。今でもインテルは好業績を誇っているが、もはや業界の覇者の面影はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中