コラム

知られざる数億ションの世界(2)夜、照明がつかない住戸には大型金庫がある

2022年08月10日(水)10時46分

上層階に数億ションが多くなる都心の超高層。暗い部屋に大金庫がある秘密とは(イメージ写真) kanzilyou-iStock.

<数億ションや10億ションには、特別な買い手特有の事情がある>

新築時の分譲価格が数億円、ときに10億円を超える高額住戸=数億ション、10億ションには、独自の設計があるし、特殊な事情もある。

高額のお金を出して購入したはずなのに、夜、照明がつかない、つまり使っていないのでは、と推測される住戸が目立つのも特殊事情のひとつだ。

照明がついていないのを見て、さては中国の人が投資目的で購入し、値上がりするまで寝かせているな、と推測されることがある。

しかしながら、高額マンションの販売現場で「中国本土からの購入者が多い」という話は聞いたことがない。台湾と香港からの購入者はいるが、それは以前から一定数いるもので、近年特に増加しているわけではない。

では、購入者で多いのはどんな人か。

■「知られざる数億ションの世界」第1回の「丸見えで恥ずかしい浴室が当たり前な理由」を読む
■「知られざる数億ションの世界」第3回の「超高額住戸って、どれだけ広いものなの?」を読む

数億ション、10億ションの購入者で目立つのは、日本人で地方在住の富裕層だ。

都心の高額マンションは、別荘より利用頻度が高い

地方在住の富裕層は、東京に出てくる機会が多い。仕事で、そして夫婦で遊びにも来る。さらに、子供が東京の大学等に入学することもある。

そのため、東京での拠点として、また大学等に通う子供の住まいとして高額マンションを買うケースが多いのだ。

息子、娘が東京で1人暮らしを始めれば、心配だから、という口実で母親が度々東京に遊びに来る。部屋数の多い高額マンションであれば、母親が何日いても息が詰まることはない。

また、親類が東京でのホテル代わりにすることもある。

東京在住者がリゾート地で購入する別荘より利用頻度ははるかに高い。そのため、地方在住の富裕層が購入する都心の高額マンションはセカンドハウスとしての利用価値が高いことになる。

つまり、購入してもムダにはならない。「そんなもの買って、誰が使うのよ!」とは言われないわけだ。

そして、都心の高額マンションは値下がりしにくく、大幅な値上がりも期待できる。相続時の節税効果を考えて購入する人もいる。

以上の特性があるため、都心の高額マンションは地方の富裕層に積極的に購入される。

ただし、都心の滞在拠点として購入される高額マンションは「頻繁に利用される」といっても、その日数は限られる。大学等に入った子供が定住しなければ、1年のうち100日も利用すれば多いほうだろう。そうすると、残り200日以上は夜も照明がつかないことになる。

プロフィール

櫻井幸雄

年間200件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。・公式サイト ・書籍/物販サイト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、スカイダンスとの協議打ち切り観測 独

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story