コラム

なぜこれほど詩的なのか イランの地方都市の写真が輝きを放つ

2018年03月01日(木)19時03分

1つは、ポストプロダクションの編集能力だ。もちろん、目の前にある魅力的な瞬間瞬間を見極める眼が備わっているためではあるが、瞬間を切り取った後、誇張しすぎると逆効果になる一歩手前のところまで微妙な編集を行っている。

撮影は全てiPhoneによるが、撮影後にSnapseedというiPhoneのアプリを使って、コントラスト、明るさ、色合いの調整を、時にはスクラッチしたレイアーなどの加工的テクニックも巧みに取り入れながら行っているという。

もう1つは、テクニックとは対極にあるものだ。彼自身と被写体との関係である。ハミディの被写体には、大きく分けて2つのタイプがある。初老の男たちと、羊や馬などの動物だ。それらはハミディが子供の頃、祖父と遊んでいたときの原風景の象徴なのである。

残念ながら、その祖父は既に亡くなってしまったという。だがそれゆえか、作品からは親近感が非常に――それも自然に――伝わってくる。

ちなみに、彼はアメリカに憧れ、バスケットボールを愛し、NBA(全米プロバスケットボール協会)でプレーすることが夢だった。今でも夢見ていると語る。本職は消防士。鶏や鳥と一緒に暮らしている。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Hojjat Hamidi @hojjathamidi

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プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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