Picture Power

【写真特集】オランダに迫る海面上昇のタイムリミット

WATERLAND

Photographs by KADIR VAN LOHUIZEN

2020年12月12日(土)15時40分

首都アムステルダムのある北ホラント州の多くは平坦な低地で、泥炭地に多くの用水路が走っている

<海水面が今より3メートル以上、上昇すると、国土の一部を放棄して大都市を移転させることが必要になる可能性も>

ppholand-map.jpg1953年に発生した高潮による北海大洪水は、オランダ南西部の広い地域を冠水させ1900人近い死者を出した。国土の4分の1が海面より低いこの国にとって、堤防などの治水対策は不可欠の存在だ。その後、南西部を堤防や水門などで高潮から守るデルタ計画が進行。53年のような高潮被害は理論上、1万年に1回しか起こらなくなった。

だが、その状況が変わろうとしている。気候変動により、今世紀末には海水面が1~3メートル上昇する可能性があるからだ。これまで以上の排水施設と堤防のかさ上げは不可欠だが、それでも対応が可能なのは3メートルの上昇までだという。

それ以上になれば国土の一部を放棄し、アムステルダムやロッテルダムなどの大都市の移転が必要との指摘もある。海面上昇はもはや時間の問題であり、いずれ治水対策の費用と都市移転の費用をてんびんに掛けることになる。

デルタ計画の完成には40年を要した。だが、今のオランダに残された時間はそれほど長くはないかもしれない。

ppholand0102.jpg

1、北海の一部であるワッデン海と、かつて湾だったアイセル湖を仕切る「締切大堤防」。1932年に完成し、周辺の土地を高潮から守るとともに干拓を可能にしている。昨年からは堤防の強化計画が進む


ppholand0202.jpg

2、約1000年前から泥炭地の上に町が造られ、水運業で栄えたゴーダ。水を含んだスポンジのような土壌は、町の建造とともに緩やかに沈下し続けている。海水面の上昇もあり、根本的な解決策は見当たらない


ppholand0302.jpg

3、南西部ゼーラント州の村ウォルファールトスデイクで、トウモロコシやサムファイアという野菜を栽培する農家の男性。海沿いの土地は塩分濃度が高いため、栽培できる作物の種類は限定される


ppholand0402.jpg

4、巨大な可動式の防潮堤「マースラントケリンク」の建造により、デルタ計画は完成。ロッテルダムの町と港を守る重要施設だが、海水面が上昇すればほぼ年中閉鎖されることになり、町と海は分断される


ppholand0502.jpg

5、1953年の高潮と同じく、嵐と大潮が重なった2019年1月8日にテルスヘリング島で起きた洪水。治水対策により本土の被害は軽微だったが、対策が十分でない土地ではこうした被害が頻発するようになった

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日仏、円滑化協定締結に向けた協議開始で合意 パリで

ワールド

NATO、加盟国へのロシアのハイブリッド攻撃を「深

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比1.6%増 予想と一

ワールド

暴力的な抗議は容認されず、バイデン氏 米大学の反戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story