コラム

消費者はなぜ愚かなのか

2018年06月25日(月)13時54分

これは消費者の味覚能力が低いからか。

そうではない。おそらくブラインドテストをしても、ほとんどの人が味の差を聞かれれば、はっきりあると答えるだろう。

理由は、やる気がないからである。

味だけでなく、真面目に合理的な選択をしようとしてないからである。

そうなれば、メーカー側も真面目に味を良くするのは馬鹿馬鹿しい。いい加減な選択をする消費者を上手く誘導することだけ考えるようになる。

これはまさに行動経済学ではあるが、ありていに言ってしまえば、消費者がいい加減すぎるのである。

これはなぜペットボトルのお茶と水で顕著か。

それはこれらを買う消費者というのは、もっともやる気のない消費者であるからである。

真面目に合理性を追求するなら、コンビニや自販機でお茶や水を買わず、買いだめしておくか、ドラッグストアに行く。もっと合理的であれば、ペットボトルの飲料など一切買わず、ランチ代に130円回す。

企業は味よりCMに力を入れる

だから、そもそも対象となる消費者プールがいい加減な消費行動をする人々に限られているので、メーカーも、そういう場合に一番反応しそうな、TVCM戦略にだけ力を入れて、後は手抜きするのである。

不味い商品を買わされているのは、我々のせいなのである。

これは世の中のほとんどすべての商品に関してもいえる。

例えば、もっと嗜好性の強いと思われるポテトチップスですら、大手E社のものが売れている。さらに、この会社はとてもよい会社と言われている。しかし、私からすれば最低の会社で、あれだけブランド力があり、収益力があるにもかからず、良い製品を作ろうとしないのは問題である。経営者が代わって経営がものすごくよくなったということで、ビジネススクールやメディアでも評判がいいが、実際、コストカットに成功しただけで、結局、弱小ライバルよりも依然不味いものを作って、圧倒的なシェアを誇っている。

食品ですらこうであるから、そのほかの質の分かりにくい製品に関しては目も当てられない。

人間の判断能力もたかがしれているが、その僅かな能力ですら使おうとすらしてないのが我々消費者なのである。

我々はやる気がない。

そういうことだ。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高の流れ引き継ぐ

ビジネス

為替動向を24時間注視、必要なら「適切に対応」=神

ビジネス

小売業販売額3月は前年比1.2%増、2月からプラス

ビジネス

3月鉱工業生産速報は前月比+3.8%=経済産業省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story