最新記事
シリーズ日本再発見

大滝詠一が本当に聴かせたかったのは、この音だった...『乗合馬車』に込められた思い

2023年03月25日(土)13時35分
山澤健治(フリー・エディター&ライター)
『大瀧詠一 乗合馬車(Omnibus) 50th Anniversary Edition』

写真:岩崎寛

<大滝詠一ワールドの「原点」が、本人が望んだ形に近づいた日。そこには大滝のどのような思いが詰まっていたのか。『Pen Books 大滝詠一に恋をして。』より抜粋>

大滝詠一がまだ、はっぴいえんど在籍中の1972年11月25日に発表したファースト・ソロ・アルバム『大瀧詠一』は、大滝が愛してやまない60~70年代のアメリカン・ポップスやソウル、ファンクの要素と、はっぴいえんどで培ったロックのエッセンスが混在し、のちにナイアガラで結実させる音楽ボキャブラリーが炸裂する大滝ワールドの原点とも言える作品だ。

大滝は当初、シングル盤を6枚出し、それを集めて『オムニバス』のタイトルでこのアルバムを発表するアイデアをもっていたが、諸事情から断念。ちなみにそのシングル先行型のアイデアは、のちにキャロルがデビューする際に実現させることとなる。

これまでも様々な形態で発売されてきた『大瀧詠一』だが、発表からちょうど50年にあたる2022年11月25日にリリースされた50周年記念盤は、その豪華さと内容で他を圧する充実ぶりを見せつける初のCD2枚組。

当初のアイデアが反映されたタイトル『大瀧詠一 乗合馬車(Omnibus) 50th Anniversary Edition』が物語るように、大滝本人が望んでいた形に一歩も二歩も近づいた作品となった。

大滝自身が10年前に構想した曲順に13曲を並べ直したファースト・ソロ作完結盤と、初公開の未発表音源を複数収めた14曲のレア音源集からなるCD2枚組は、その内容だけでもファン必聴なのだが、なにより特筆すべきは、オリジナル・マスターテープより最新マスタリングし、大滝が望んでいたサウンドを高音質で実現した点。

豪華ブックレットも読み応えある記念盤に、感涙は必至だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中